「一括で返してください」と通知が来た 期限の利益の喪失とは何か

目次

結論

「期限の利益」とは、住宅ローンを毎月分割で返していける立場・利益のことです。これを失うと、それまでの「毎月○万円ずつ返済する」という約束ではなく、残っている住宅ローンについて一括返済を求められる状態になります。

数千万円の住宅ローン残高を一度に支払える方は多くありません。そのため、この通知は単に「全部払ってください」という意味だけではなく、住宅ローンの手続きが次の段階へ進んでいることを示す重要な書面でもあります。

ただし、この通知が届いたからすべて終わり、というわけではありません。任意売却を含め、状況によって検討できる方法が残っている場合があります。まず、手元に住宅ローンの契約書と、届いた通知・封筒を用意してください。

期限の利益とは何か

「期限の利益」という言葉は難しく見えますが、考え方はそれほど複雑ではありません。

たとえば3,000万円を35年返済で借りた場合、借りた3,000万円を契約当日に全額返すわけではありません。契約で決められた日まで、毎月一定額ずつ返していけばよいことになっています。

このように、返済期日が来るまで支払いを待ってもらえる利益を期限の利益といいます。

期限の利益は民法上の考え方であり、借りた側から放棄することもできます。住宅ローンでいえば、一定の条件のもとで行う繰り上げ返済などがイメージしやすいでしょう。

つまり、住宅ローンを毎月分割で返していけるということ自体が、借りた側にとって大切な利益なのです。

そして、その利益を失うことを期限の利益の喪失といいます。

なぜ期限の利益を失ったのか

住宅ローンの契約書や取引規定には、どのような場合に期限の利益を失うのかが定められています。

たとえば、返済を一定期間延滞した場合、契約上の義務に違反した場合、信用状態に重大な変化が生じた場合などです。具体的な条件は金融機関や契約内容によって異なります。

契約によっては、

「返済を遅延し、一定の時期までに解消されなかった場合」

「分割金の支払いを一定回数怠った場合」

など、かなり具体的に書かれています。

ここで大切なのは、何ヶ月滞納したら必ず期限の利益を失う、という全国共通の数字ではないことです。

インターネットに「3ヶ月」「6ヶ月」と書かれていても、それだけで自分の契約を判断してはいけません。

あなたの場合の条件は、あなたの住宅ローン契約書や取引規定に書かれています。

契約書を開き、「期限の利益」「期限の利益の喪失」「期限前の全額返済」などの項目を確認してください。分からなければ、金融機関へ確認して構いません。

「一括で返してください」という通知が届くと何が変わるのか

1.毎月返済から、一括請求へ変わる

それまでは、

「毎月10万円を返してください」

という状態だったものが、

「残っている住宅ローン全体を支払ってください」

という請求に変わります。

これが期限の利益を失うことの最も大きな変化です。

2.遅延損害金の計算にも影響することがある

期限の利益を失った後は、遅延損害金の対象や計算方法が変わる場合があります。契約によって異なりますので、通知に書かれている元金、利息、遅延損害金などの内訳を確認してください。

金額が分からない場合は、**「現在の請求額の内訳を教えてください」**と金融機関へ確認してください。

3.返済条件の変更が難しくなる

滞納前や滞納初期であれば、返済期間の延長や一定期間の返済額の変更などについて相談できる場合があります。

しかし、期限の利益を失った後は、すでに通常の分割返済から一括請求へ契約関係が進んでいるため、従来の返済条件へ戻すことは一般に難しくなります。

ただし、個別事情によって金融機関等がどのように対応するかは異なります。

「もう絶対に何も相談できない」

と自分で決めず、現在の扱いを確認してください。

4.保証会社による代位弁済へ進む場合がある

保証会社付きの住宅ローンでは、一定の手続きが進むと、保証会社があなたに代わって銀行へ住宅ローン残高を支払うことがあります。

これを代位弁済といいます。

代位弁済が行われると、住宅ローンそのものが消えるわけではありません。

返済を求める相手が、銀行から保証会社などへ変わる

ということです。

そのため、以前は銀行の担当者と話していたのに、

「今後はこちらへ連絡してください」

と保証会社などを案内されることがあります。

これは銀行の担当者が突然冷たくなったわけではなく、契約上の手続きが次の段階へ移った結果です。

この段階でも、まだ確認できることがあります

一括請求の通知を見れば、

「もう家を取られる」

「競売しかない」

と思うかもしれません。

しかし、まずは次のことを順番に確認してください。

1.通知を読み、誰から来たものか確認する

最初に見るのは、差出人です。

銀行なのか。

保証会社なのか。

債権回収会社なのか。

また、

  • 何という書類なのか
  • 請求額はいくらか
  • 期限はいつか
  • 次の手続きについて何と書いてあるか

を確認してください。

通知も封筒も捨てないでください。

郵送方法や日付が、現在の状況を確認するときの材料になることがあります。

2.現在の連絡先へ連絡する

一括で支払えないとしても、連絡を放置することはおすすめできません。

「一括で支払うことはできません。現在どういう状況になっているのか確認したいです」

と伝えてください。

現在の債権者は誰なのか。

次にどのような手続きが予定されているのか。

確認するだけでも構いません。

3.家を売った場合の価格を確認する

ここは非常に重要です。

家の価格を調べることと、売却することは別です。

たとえば住宅ローンが2,500万円残っていても、家が2,700万円で売れるなら、通常売却で整理できる可能性があります。

逆に家が1,800万円程度でしか売れないのであれば、売却しても住宅ローンが残ります。

この数字が分からなければ、

通常売却なのか。

任意売却なのか。

残った債務について法律の専門家へ相談する必要があるのか。

判断できません。

まず数字を知ってください。売るかどうかは、それから決めればいいのです。

4.売却代金だけで完済できない場合は、任意売却を検討する

家を売っても住宅ローンを完済できない場合、通常の売却では抵当権の抹消が難しくなることがあります。

その場合に検討される方法の一つが任意売却です。

任意売却とは、債権者などの承諾を得ながら、住宅ローンを完済できない状態でも抵当権の抹消に応じてもらい、不動産を売却する方法です。

ただし、

不動産会社が「できます」と言えばできるものではありません。

債権者等の承諾が必要です。

また、買主を探す時間も必要になります。

5.残った債務の整理が必要なら、法律の専門家へ相談する

任意売却をしても、売却代金で返済できなかった債務が残る場合があります。

その債務を今後どのように整理するのか。

分割返済なのか。

債務整理などの法的手続きが必要なのか。

こうした判断は弁護士など法律の専門家の分野です。

不動産会社が自己破産をすべきかどうかを決めるものではありません。

なぜ、この段階では「時間」が重要なのか

住宅ローンを完済できない状態で任意売却を進める場合、相談を受けたその日にすべて終わるわけではありません。

一般的には、不動産調査、価格査定、債権者との協議、販売活動、買主探し、売却条件の調整、配分の確認、他の抵当権や税金の差押えがある場合の調整、売買契約、決済という複数の工程があります。

特に時間が読みにくいのが、買主がいつ見つかるのかという部分です。

さらに、債権者や自治体など、相手側の確認が必要なことも多くあります。

そのため、手続きがさらに進んでから相談すると、方法そのものが存在していても、その方法を実行するための時間が足りないということがあります。

だから、

「すぐ売ってください」

ではありません。

早く、今の状況を確認してください。

ということです。

「期限の利益を失った=もう終わり」ではありません

ここは大切なので、はっきり書きます。

期限の利益を失ったということは、

住宅ローンの状態がかなり進んだ段階にある

ということです。

しかし、それと、

もう何もできない

は同じ意味ではありません。

通常売却で完済できる可能性もあります。

任意売却を検討できる可能性もあります。

残った債務を別途整理する方法を検討することもあります。

何ができるかは、

住宅ローン残高。

家の価格。

届いている通知。

税金などの差押え。

競売手続きの有無。

その他の債務。

によって変わります。

だから、まず現在地を確認することです。

では、誰に相談すればいいのか

この段階になると、住宅ローンだけを見ればいいとは限りません。

不動産。

残債。

税金。

差押え。

法律問題。

離婚。

相続。

次の住まい。

その後の生活。

複数の問題が重なることがあります。

弁護士は法律の専門家として法的整理を扱います。税理士は税務を扱います。不動産会社は家がいくらで売れるのか、通常売却や任意売却をどう進めるのかを扱います。

それぞれ役割が違います。

ただ、相談する側にとって問題は一つです。

「住宅ローンが払えなくなった。この先、自分と家族の生活をどう立て直すのか」

この視点で相談先を選んでください。

株式会社エルライフの考え方

株式会社エルライフは不動産会社ですが、「不動産会社だから家を売る」というところから始めません。

最初に確認するのは、今どの段階なのか、住宅ローンはいくら残っているのか、家はいくらで売れそうなのか、売った場合に債務はいくら残るのか、税金など他の問題はないか、その後どこに住むのかということです。

その数字と状況を確認し、

この方にとって最終的に何が一番いいのか

を考えます。

売却が必要でない場合は、売却を唯一の答えにはしません。

士業会は「提携先」ではありません

株式会社エルライフは、一般社団法人 士業会と連携しています。弁護士、司法書士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など、それぞれ異なる専門分野を持つ人たちがいます。

社員ではありません。また、単に案件を紹介するためだけの関係でもありません。

一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考えるチーム・仲間という関係です。

期限の利益を失った段階では、不動産をどうするかだけでなく、売却後の残債をどうするのか、差押えがある場合はどう整理するのか、法的整理が必要なのかまで考える場合があります。

問題が一つなら、考える側も一つのチームであるべきだ。

私たちはそう考えています。

自己破産について

住宅ローンの一括請求を受けると、

「自己破産しかないのでは」

と考える方もいます。

しかし、私たちは自己破産をする・しないという判断をする立場ではありません。

自己破産が必要なケースはあります。

その判断は弁護士など法律の専門家が行います。

私たちが大切だと思うのは、

判断材料を先に揃えることです。

家はいくらで売れるのか。

住宅ローンはいくら残るのか。

売った後、債務はいくら残るのか。

その他の借金はどのくらいあるのか。

今後の収入と生活はどうなるのか。

その数字を確認したうえで、必要な法的整理を専門家と検討する。

売却ありき、自己破産ありき、リースバックありきで最初から答えを決めない。

それが私たちの考え方です。

私たちに決められないこと

住宅ローンの問題には、不動産会社だけでは決められないことが数多くあります。

期限の利益を元の状態へ戻せるかどうかは金融機関等の判断です。任意売却に応じるかどうかは債権者等が判断します。売却価格にも債権者等の意向が関係します。

引越し費用等を売却代金から確保できるか、売却後の残債についてどのような返済条件になるかについても、私たちだけで決めることはできません。

だから、

「必ずできます」

「大丈夫です」

とは最初から言いません。

できること。

できないこと。

相手の判断が必要なこと。

そこを分けて説明します。

よくある相談場面

ケース1 通知の意味が分からず、何もできなかった

書面に難しい言葉が並び、「一括返済」と大きな金額が書かれている。それだけで怖くなり、封筒に戻したまま時間が経ってしまう場合があります。

まず行うのは、誰から届いた書類で、現在どの段階なのかを確認することです。

意味が分かれば、次に何を確認すればいいかも見えてきます。

ケース2 銀行へ連絡しても話が進まなかった

以前の銀行担当者へ何度も連絡しても、具体的な話が進まない場合があります。

確認すると、すでに保証会社による代位弁済が行われ、請求を行う相手が変わっていることがあります。

「誰と話すべき段階なのか」を確認することが大切です。

ケース3 家の価格を知ることで、次の判断が具体的になった

「売っても2,000万円くらい借金が残る」

と思い込んでいたものの、査定をすると想定より高い価格で売れる可能性が分かることがあります。

逆に、思っていたより大きなオーバーローンだと分かることもあります。

どちらであっても、

数字が分かれば、次の相談が具体的になります。

専門家コメント 宅地建物取引士 松本

「一括で返してください」という通知を持って相談に来られた方から、

「もう終わりですか」

と聞かれることがあります。

私は、

「終わりではありません。ただ、時間の使い方が変わる段階です」

とお伝えします。

期限の利益を失ったということは、契約上の手続きが次の段階へ進んだということです。

だから、何もなかった頃と同じように、

「しばらく考えます」

という時間の使い方はしにくくなっています。

しかし、

家はいくらなのか。

ローンはいくら残っているのか。

今誰が債権者なのか。

競売手続きは始まっているのか。

そこを確認すれば、まだ何ができるのかが見えてきます。

もう一つ、銀行や保証会社の担当者を敵だと思わないでください。その方たちは組織のルールの中で仕事をしています。手続きが進めば、以前の担当者には決められないことも増えます。

だから私が大事だと思うのは、どこの会社に相談するかだけではなく、誰を自分の味方につけるのかということです。

不動産を売ることだけを見る人なのか。

売った後の債務や次の住まい、これからの生活まで考える人なのか。

数字を知るだけなら、何も失いません。

まずは現在の状況を知るところから始めてください。

よくあるご質問

Q1.期限の利益を元に戻してもらうことはできますか。
金融機関等の判断によります。状況によって相談できる場合はありますが、不動産会社が「戻せる」と確約できるものではありません。現在の契約状況を金融機関へ確認してください。

Q2.何ヶ月滞納すると期限の利益を失いますか。
一律ではありません。契約書や取引規定に条件が定められています。インターネットの一般論ではなく、ご自身の契約内容を確認してください。

Q3.一括請求が来たら、すぐ競売になりますか。
必ず直ちに競売になるわけではありません。保証会社による代位弁済など、その後の手続きを経る場合があります。ただし進み方や時期は契約・債権者・状況によって異なります。

Q4.期限の利益を失ったあとでも任意売却できますか。
任意売却を検討できる場合があります。ただし債権者等の承諾が必要です。また、買主探しや関係者との調整に時間が必要なので、現在の状況を早めに確認してください。

Q5.届いた通知は捨てても大丈夫ですか。
捨てずに保管してください。封筒も残しておくことをおすすめします。差出人、日付、郵送方法などが現在の状況を確認する材料になる場合があります。

Q6.家族に知られずに相談できますか。
最初の相談はお一人でも可能です。ただし、共有名義、連帯債務、連帯保証などの関係がある場合、実際の手続きを進める段階では他の関係者の協力や同意が必要になることがあります。

まとめ

期限の利益とは、住宅ローンを契約どおり分割で返済していける利益です。その利益を失うと、残っている住宅ローンについて一括返済を求められる状態になります。

ただし、期限の利益を失ったからといって、すべての方法がなくなったわけではありません。

まず確認することは、①届いた通知と契約書を確認する、②現在の債権者・手続きの段階を確認する、③住宅ローン残高と家の価格を確認することです。

売却代金で完済できるのか。

任意売却を検討する必要があるのか。

残った債務について法律の専門家へ相談する必要があるのか。

それは、数字を見てから判断します。

調べることと、売ることは別です。

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