結論
競売を回避する方法は、実質的に次の3つです。
- 滞納を解消する(現実には難しいことが多い)
- 任意売却をして、申立てを取り下げてもらう
- 法的整理を検討する(弁護士の領域です)
そして、期限について、正確にお伝えします。
民事執行法第76条第1項は、こう定めています。
「買受けの申出があった後に強制競売の申立てを取り下げるには、最高価買受申出人又は買受人及び次順位買受申出人の同意を得なければならない」
つまり、開札が終わって買受人が決まった後は、その買受人の同意がなければ取り下げられません。
現実には、同意は得られないと考えるべきです。
したがって、実務上のタイムリミットは「開札期日」です。
ただし、それは「その日まで動けばよい」という意味ではありません。
理由を説明します。
はじめに
「まだ間に合いますか」
このご質問に、私たちは軽々しく「間に合います」とは答えません。
間に合う場合もあれば、間に合わない場合もあるからです。
そして、「まだ大丈夫ですよ」と言われて安心してしまい、結果的に間に合わなかったという話もあります。
だから、この記事では期限を正確に書きます。
まず、競売の手続きの流れ
一般的な流れです。
- 競売開始決定(裁判所から通知が届きます)
- 執行官による現況調査(拒否できません)
- 評価・売却基準価額の決定
- 公告(入札期間が始まる前に行われます)
- 期間入札
- 開札期日(最高価買受申出人が決まります)
- 売却許可決定
- 売却許可決定の確定
- 代金納付
- 所有権移転
この流れのどこにいるかで、できることが変わります。
なお、期間入札で入札がなかった場合は、特別売却に進むことがあります。
【最重要】法律上の期限
買受けの申出があるまでなら
申立てをした債権者が取り下げれば、競売は終わります。
ただし、取り下げるかどうかを決めるのは債権者です。
あなたでも、不動産会社でもありません。
では、どういうときに債権者が取り下げを検討するのか。
その一つが、任意売却によって回収の見込みが立ったときです。
これが、任意売却で競売を回避するという意味です。
買受けの申出があった後は
民事執行法第76条第1項により、最高価買受申出人または買受人、次順位買受申出人などの同意が必要になる場合があります。
買受人は、その物件を買うために保証金を納め、手続きを進めてきた人です。
開札後の取下げは、現実的には非常に難しくなります。
自分で買い戻すことはできません
知っておいていただきたい点です。
民事執行法第68条は、債務者は買受けの申出をすることができないと定めています。
つまり、債務者本人が、自分の家を競売で自分自身で買い戻すことはできません。
【本題】では、実務上いつまでか
法律上の大きな分かれ目は、買受けの申出が入る前後です。
しかし、実務ではもっと前から動かなければ間に合いません。
理由は、任意売却には時間がかかるからです。
任意売却に必要なこと
- 物件を調べ、価格を出す
- 債権者に売り出し価格を確認してもらう
- 買主を探す
- 売却代金の配分を債権者等に確認してもらう
- 後順位の抵当権者や税金の差押えがあれば、その調整
- 売買契約を結ぶ
- 抵当権・差押えの抹消書類を準備する
- 決済と引き渡し
- 債権者に競売の取下げをしてもらう
この中には、債権者・役所・司法書士・買主など、相手の返事を待つ時間が含まれます。
そして何より、買主がいつ現れるかは誰にも約束できません。
だから、開札日だけを見て、
「あと3ヶ月あるから大丈夫」
とは判断できないのです。
開札日から逆算してください
考え方はこうです。
| 段階 | 必要なこと |
|---|---|
| 開札期日 | 法律上、大きな分かれ目 |
| その前 | 決済・競売取下げ |
| さらに前 | 抹消書類・配分確認 |
| さらに前 | 売買契約 |
| さらに前 | 買主を決める |
| さらに前 | 売却活動 |
| さらに前 | 債権者への価格確認 |
| 今 | 相談・状況確認 |
実際に買主を決めなければならない時期は、開札日よりかなり前です。
段階ごとに、できること
競売開始決定通知が届いた段階
まだ検討できる可能性があります。
この段階なら、任意売却の準備を始める時間を確保できることがあります。
ただし、すぐに動いてください。
現況調査が終わった段階
評価、売却基準価額の決定、入札へと進んでいます。
まだ可能性はありますが、時間は減っています。
期間入札の通知が届いた段階
ここまで来ると、期日が具体的に見えてきます。
手元の通知を確認し、そこから逆算して、必要な工程が終わるかを判断する必要があります。
この段階では、間に合わない案件も増えてきます。
開札が終わった段階
買受けの申出が入り、買受人が決まっている場合、取下げには買受人等の同意が必要になる可能性があります。
現実的には、非常に困難です。
「必ず止められます」と言う相手には注意してください
競売の申立てを取り下げるかどうかを決めるのは、申立てをした債権者です。
不動産会社ではありません。
そして、買受けの申出が入った後は、買受人等の同意が必要になることがあります。
ですから、
「うちなら競売を止められます」
と最初から言い切る説明を受けたら、
「それは誰が決めるのですか」
と聞いてください。
間に合わない場合、どうするか
正直に書きます。
間に合わないと判断される場合もあります。
そのとき大事なのは、残された時間を次の生活の準備に使うことです。
- 次の住まいを探す
- 賃貸の審査を受ける
- 引越し費用を準備する
- 家族と退去時期を共有する
- 残った債務について専門家に相談する
競売後も、すぐその日に外へ出されるわけではありません。
買受人による代金納付後、必要に応じて引渡命令、明渡しの手続き、強制執行へと進みます。
だからこそ、間に合わない場合は、その時間を生活再建に使うという判断も必要になります。
「なんとかします」と言って引き受け、結局間に合わなかったら、困るのはご本人です。
私たちに決められないこと
正直に書いておきます。
次のことは、私たちの一存では決められません。
- 競売の申立てを取り下げるかどうか(債権者の判断です)
- 買受人等が取下げに同意するかどうか
- 任意売却に応じてもらえるかどうか
- 売り出しの価格
- 税金の差押えを解除してもらえるかどうか
- 買主がいつ現れるか
- 裁判所の手続きの進行
「競売は止められます」とは申し上げません。
では、誰に相談すればいいのか
競売の手続きが始まっている場合、時間との勝負になります。
不動産だけを見ても足りません。
弁護士は法的な整理を検討し、司法書士は登記を確認し、不動産会社は売却価格と売却可能性を判断します。
そして、税金の差押えがあれば、役所との協議も必要になります。
相談する側から見れば、問題は一つです。
「この家をどうすれば、家族の生活を守れるのか」
株式会社エルライフの考え方
私たちは不動産会社ですが、「不動産会社だから家を売る」というところから始めません。
競売の手続きが始まっている方については、まず、
「今どの段階なのか」
そして、
「本当に間に合う可能性があるのか」
を確認します。
最初に考えるのは、この方にとって最終的に何が一番いいのかです。
間に合う可能性があるなら、必要な手続きを急ぎます。
反対に、間に合わない可能性が高いと判断すれば、そのことを正直にお伝えします。
そして、次の住まいや生活の準備へ切り替えることをご提案します。
士業会は「提携先」ではありません
株式会社エルライフは、一般社団法人 士業会と連携しています。
ここには弁護士、司法書士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など、それぞれ違う専門分野を持つ人がいます。
社員ではありません。案件を回すための紹介先でもありません。
一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考える、チーム・仲間という関係です。
この段階では、特に時間の管理が大事になります。
抵当権の抹消は司法書士。
法的整理は弁護士。
税金の差押えがあれば、税務・行政との調整。
不動産の売却は私たち。
それぞれを別々に動かして、返事を待っている時間がないことがあります。
だから、必要な専門家が必要な場面で加わる形にしています。
自己破産について
「自己破産しないほうがいい」とは申し上げません。
必要なケースは実際にあります。
そして、その判断をするのは弁護士です。
まず、不動産を整理した場合に実際にいくら債務が残るのかを確認する。
そのうえで、今後の収入や生活を見ながら、必要であれば弁護士と法的整理を検討する。
売却ありき、自己破産ありきで結論を決めない。
これが私たちの考え方です。
よくある相談場面
実際の事例ではなく、一般的に起こり得るケースとしてご紹介します。
ケース1:逆算していなかった
開札期日まで時間があると思っていた。
しかし実際には、売買契約、債権者の承諾、書類準備、決済まで考えると、買主を決める必要がある時期はかなり手前だった、というケースです。
ケース2:自分で買い戻せると思っていた
競売になっても、自分で入札して買い戻せばよいと考えていた。
しかし、債務者は買受けの申出をすることができないと分かった、というケースです。
ケース3:間に合わなかった
開札が近い段階でのご相談で、買主探し、債権者との調整、必要書類、決済までを終える時間を確保できる見込みが立たなかった。
この場合、私たちにできることは限られます。
専門家コメント 宅地建物取引士 松本
「まだ間に合いますか」
このご質問をいただいたとき、私はまず、
「裁判所から届いた書類を見せてください」
と申し上げます。
そこに、今の段階と期日が書かれているからです。
競売については、気持ちでは判断できません。
「まだ3ヶ月ある」
「まだ開札まで時間がある」
そう思っていても、任意売却は買主が決まって終わりではありません。
買主を探す。
売買契約をする。
債権者に配分を確認してもらう。
抵当権や差押えの抹消書類を準備する。
決済をする。
そして、競売を取り下げてもらう。
この全部に時間がかかります。
しかも、買主がいつ現れるかは誰にも分かりません。
だから、本当に見るべきなのは開札日ではありません。
「いつまでに買主を決めなければならないか」
ここです。
もう一つ、よく誤解されていることがあります。
競売になった家を、自分自身で入札して買い戻すことはできません。
民事執行法には、債務者は買受けの申出をすることができないと定められています。
そして、開札後についても、簡単ではありません。
買受けの申出が入った後の取下げには、買受人等の同意が必要になることがあります。
買おうとして手続きを進めてきた人が、「取り下げていいですよ」と言ってくれるとは考えにくい。
ですから、開札が終わった後を前提に考えるべきではありません。
そして、私は、
「うちなら必ず競売を止められます」
とは申し上げません。
決めるのは債権者です。
私たちではありません。
間に合う可能性があるなら、できる限りのことをします。
でも、間に合わない可能性が高いなら、それも正直にお伝えします。
そのときは、次の住まいを探し、生活を整えることに時間を使ったほうがいい場合があります。
「なんとかします」と言うほうが簡単です。
でも、それでは責任を持った説明になりません。
大事なのは、どこの会社に相談するかだけでなく、誰を自分の味方につけるのかということです。
期日を見て、そこから逆算した日付を言える相手を選んでください。
よくあるご質問
Q1. 競売はいつまでなら止められますか。
買受けの申出があった後は、買受人等の同意が必要になる場合があります。
そのため、開札後を前提に考えるべきではありません。
任意売却に必要な時間を逆算し、できるだけ早く動く必要があります。
Q2. 開札の日まで動けば間に合いますか。
いいえ。
買主探し、債権者の承諾、配分確認、抹消書類、決済まで時間が必要です。
実際に動く期限は、かなり手前です。
Q3. 自分で競売に入札して買い戻せますか。
できません。
民事執行法第68条により、債務者は買受けの申出をすることができません。
Q4. 誰が競売を取り下げるのですか。
申立てをした債権者です。
不動産会社が決めることではありません。
Q5. 入札がなかったらどうなりますか。
期間入札で買受けの申出がなかった場合、特別売却など次の手続きに進むことがあります。
「入札がなかったから競売が終わる」とは限りません。
Q6. 間に合わない場合、どうすればいいですか。
次の生活の準備を優先してください。
次の住まい、引越し費用、退去時期、残った債務の整理を進めます。
法的な整理が必要な場合は、弁護士と検討してください。
まとめ
- 競売を回避する方法は、滞納の解消・任意売却による取下げ・法的整理
- 競売の取下げを決めるのは債権者
- 買受けの申出があった後は、買受人等の同意が必要になる場合がある
- 開札後を前提に考えない
- 任意売却には、買主探し・債権者の承諾・配分確認・書類・決済の時間が必要
- 実際に動く期限は、開札日よりかなり手前
- 債務者本人は競売で買受けの申出ができない
- 「必ず競売を止められます」と言う相手には、**「誰が決めるのですか」**と聞く
- 間に合わない場合は、次の生活の準備に切り替える
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