結論
任意売却は、通常の不動産売却とほぼ同じ方法で進めます。
そのため、近所の方が外から見ただけで、「住宅ローンを滞納して任意売却している」と分かることは通常ありません。
一方で、競売になると状況は大きく変わります。
裁判所が運営する**BIT(不動産競売物件情報サイト)**で物件情報が公開され、誰でも閲覧できる状態になります。
しかも公開されるのは、住所や価格だけではありません。
間取り図、建物の外観、場合によっては室内写真などを含む「3点セット」まで閲覧できるようになります。
つまり、
「できるだけ周囲に事情を知られたくない」という点でも、競売になる前に動く意味があります。
ただし、任意売却なら絶対に誰にも知られないという意味ではありません。
誰に伝わる可能性があるのか。
どこまで公開されるのか。
その違いを正確に整理します。
はじめに
「近所に知られたくない」
「親にはまだ言えていない」
「子どもにも話していない」
住宅ローンのご相談では、こうしたお話を本当によく伺います。
家の問題は、お金だけの問題ではありません。
長く住んできた場所。
ご近所との関係。
お子さんの学校。
ご両親との関係。
そして、
「自分が住宅ローンを払えなくなったことを知られたくない」
というお気持ちがあります。
そう思われること自体は、珍しいことではありません。
ただし、ひとつだけ知っておいてください。
「知られたくないから何もしない」という選択が、結果として最も広く知られる状態につながることがあります。
それが競売です。
競売になると、何が公開されるのか
1.BITに掲載されます
裁判所では、不動産競売物件の情報を公開するために、
BIT(不動産競売物件情報サイト)
という仕組みを運営しています。
BITは、
- インターネットから閲覧できる
- 会員登録不要
- 利用料不要
という仕組みです。
つまり、
特別な資格がなくても、誰でも見ることができます。
物件を探している投資家だけではありません。
不動産会社。
近所の方。
知人。
誰でも検索できる状態になります。
2.「3点セット」が公開されます
競売物件では、
いわゆる3点セットが重要な資料になります。
3点セットとは、
- 物件明細書
- 現況調査報告書
- 評価書
です。
これらには、
物件の権利関係や評価額だけではなく、
- 間取り
- 外観写真
- 室内の状況
- 使用状況
- 占有状況
などが記載される場合があります。
なぜ、ここまで公開されるのか。
競売では、通常の不動産売買のように、
買いたい人が自由に室内を内覧できるわけではありません。
そのため、
入札する人が物件の状態を判断するために、
現況調査報告書や写真が重要な情報になる
という仕組みです。
3.公告されます
競売では、
期間入札の前に公告が行われます。
裁判所による公告やBITなどを通じて、
物件情報を確認できる状態になります。
また、
競売情報を扱う民間サイトなどでも、
裁判所の公開情報をもとに物件情報が掲載されることがあります。
一度公開情報になれば、裁判所だけに情報が留まるわけではありません。
4.執行官による現況調査があります
競売手続きが進むと、
裁判所の執行官による現況調査が行われます。
執行官が物件を確認し、
建物や室内の状態、
誰が住んでいるのか、
どのように使われているのかなどを調査します。
必要に応じて写真も撮影されます。
そして、
この現況調査は、法律に基づく手続きです。
単に、
「今日は困ります」
「家には入りたくありません」
という理由だけで、手続きそのものを止めることはできません。
5.売却結果の情報も残ります
BITでは、
過去の売却結果などを確認できる機能もあります。
つまり、
競売が終わった瞬間に、
すべての情報が完全に消えてしまうわけではありません。
競売は、通常の不動産売却と比べて公開性が高い手続きです。
任意売却の場合はどうなのか
任意売却は、
債権者等の承諾を得ながら進める不動産売却
ですが、
販売そのものは通常の売却と同じように行うことができます。
たとえば、
- 不動産ポータルサイトへ掲載する
- 不動産会社間で物件情報を共有する
- 買主から問い合わせを受ける
- 内覧してもらう
- 売買契約を結ぶ
という流れです。
外から見れば、
普通に家を売却しているように見えます。
「任意売却物件です」と広告する必要はありません
通常、
一般の購入希望者向け広告に、
「住宅ローンを滞納しているため任意売却です」
などと大きく表示する必要はありません。
購入希望者に必要なのは、
物件そのものの情報です。
- 所在地
- 価格
- 間取り
- 築年数
- 面積
- 設備
- 引渡し条件
などです。
そのため、
近所の方が広告を見ても、
「普通に売却しているのだろう」
と受け取ることが多いと思います。
写真も通常の売却と同じです
競売の場合は、
裁判所の手続きの中で執行官が調査した写真などが資料になります。
一方、
任意売却の場合は通常の販売ですから、
どの写真を広告に使うのかを不動産会社と相談できます。
たとえば、
- 外観だけ掲載する
- 室内写真を限定する
- 内覧時に詳しく見てもらう
など、
販売方法を検討できます。
もちろん、
買主を見つけるためには一定の情報公開が必要です。
しかし、
競売とは公開の仕組みそのものが違います。
内覧の日時も相談できます
任意売却では、
買主候補から内覧希望が入れば、
居住者と日時を調整して案内します。
たとえば、
「近所の目が気になるので平日の昼間にしたい」
「子どもがいない時間にしてほしい」
など、
できる範囲で調整できます。
通常の不動産売却と同じです。
ただし、任意売却でも「誰にも知られない」わけではありません
ここは正直にお伝えします。
任意売却でも、
手続き上、
事情を知る必要がある人はいます。
たとえば、
- 金融機関
- 保証会社
- 債権回収会社
- 仲介する不動産会社
- 抵当権抹消などを担当する司法書士
- 後順位の抵当権者
- 税金の差押えがある場合の役所
などです。
必要な関係者には当然伝わります。
【重要】共有者には伝えずに売れません
家が共有名義になっている場合、
家全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。
たとえば、
夫婦共有。
親子共有。
兄弟姉妹の相続による共有。
こうした場合、
「家族には知られずに売ってしまいたい」
ということはできません。
共有者本人の意思確認や署名・押印などが必要になります。
連帯保証人・連帯債務者にも関係します
住宅ローンに、
連帯保証人や連帯債務者がいる場合も、
その方は住宅ローンの当事者です。
任意売却によって住宅ローンや残債がどうなるのか、
その方にも大きく関係します。
関係者に黙ったまま全部を処理する、ということはできません。
登記はもともと公開情報です
もうひとつ、
知っておいていただきたいことがあります。
不動産の登記事項証明書は、誰でも取得できます。
ですから、
差押えや競売開始決定などが登記されれば、
登記を調べることで確認できる場合があります。
そのため、
競売手続きが始まったあと、
突然、
不動産会社からDMが届いたり、
訪問営業を受けたりすることがあります。
「なぜ私の住宅ローンのことを知っているのか」
と驚かれる方がいます。
しかし、
情報漏えいとは限りません。
公開されている登記情報などを確認して、
営業している会社があります。
家族には、どう伝えればいいのか
「家族にどう話せばいいか分からない」
というご相談も多くあります。
私は、
感情だけで話し始めないほうがいい
と思っています。
まず、
数字を整理してください。
家族に伝える前に確認したい数字
最低限、
次のことを確認します。
- 住宅ローンはいくら残っているのか
- 家はいくらで売れそうなのか
- 売れば住宅ローンを完済できるのか
- 売っても残るなら、どのくらい残る見込みなのか
- 次の住まいの家賃はいくらになるのか
- 引越し後の生活費はいくら必要なのか
この数字を持って、
「住宅ローンが払えなくなった」
だけではなく、
「今こういう状態で、こういう方法を考えている」
と話してください。
ご家族の不安は、
少し変わります。
配偶者には早めに伝える
配偶者が、
- 共有者
- 連帯債務者
- 連帯保証人
になっている場合、
なおさら早めに話す必要があります。
本人の同意や協力なしには進められないことがあります。
ぎりぎりまで隠して、最後に突然伝えるほうが、話がこじれやすくなります。
お子さんには「次の生活」まで決めてから伝える
お子さんにとって一番の不安は、
住宅ローンそのものではありません。
「どこに住むのか」
「学校は変わるのか」
「友達と離れるのか」
ということです。
任意売却の場合、
引渡し時期について協議できることがあります。
ただし、
最終的に調整できるかどうかは、買主や債権者等との協議によります。
それでも、
競売よりも生活設計を組み立てる余地を持ちやすいのが任意売却です。
ご両親に相談することで、選択肢が増える場合もあります
ご両親には、
特に言いづらいと思います。
「心配をかけたくない」
「怒られるのではないか」
と思われる方もいます。
ただ、
ご家族から援助を受けられる可能性がある場合、
任意売却そのものを避けられることもあります。
もちろん、
無理に援助を求めるべきだという意味ではありません。
ただ、
知られたくないという理由だけで、
使えた選択肢を失わないようにしてください。
隠し続けるとどうなるのか
ここが一番お伝えしたいところです。
「知られたくない」
その気持ちのまま、
通知を開けない。
家族にも言わない。
金融機関にも連絡しない。
そして、
競売手続きまで進む。
そうすると、
自分で情報をコントロールできる範囲が小さくなっていきます。
競売では、
裁判所の手続きとして情報が公開されます。
現況調査も行われます。
だから、
知られたくないからこそ、早く動く。
これは矛盾しているように見えますが、
とても大事な考え方です。
勤務先に知られるのか
住宅ローンを滞納しただけで、
通常、
勤務先へ、
「この人は住宅ローンを滞納しています」
と通知される仕組みではありません。
ただし、
別の債権を含めて法的手続きが進み、
給与差押えが行われる場合には勤務先が関与することになります。
給与差押えでは、
勤務先が第三債務者として手続きに関係するからです。
ただし、
住宅ローンを1回滞納しただけで、すぐ勤務先に通知が行くという話ではありません。
私たちに決められないこと
正直に書いておきます。
次のことは、
私たちの一存では決められません。
- 競売情報の公開を止めること
- 登記情報の公開を止めること
- 任意売却に応じてもらえるかどうか
- 引渡し時期をどこまで調整できるか
- 共有者が売却に同意するかどうか
- 連帯保証人・連帯債務者がどのような判断をするか
競売の情報公開は、
裁判所の制度に基づいて行われるものです。
「競売になっても情報を出さないようにできます」とは申し上げません。
また、
任意売却についても、
「絶対に誰にも知られません」とは申し上げません。
必要な関係者には伝わります。
そのうえで、
通常売却と同じ形で進められるため、周囲から事情が分かりにくい
ということです。
では、誰に相談すればいいのか
「できるだけ周囲に知られたくない」
という希望は、
不動産会社に伝えて構いません。
むしろ、
先に伝えてください。
- 広告の出し方
- 写真の使い方
- 内覧時間
- ご近所への対応
- 次の住まい
- 引渡し時期
できることと、
できないことを分けながら、
販売方法を考えます。
そして、
住宅ローンの問題は、
家を売るだけでは終わりません。
残った住宅ローン。
税金。
法律。
次の住まい。
お子さんの学校。
これからの生活。
相談する側から見れば、
問題は一つです。
「家族の生活を、どう守るのか」
ということです。
株式会社エルライフの考え方
私たちは不動産会社ですが、
「不動産会社だから家を売る」
というところから始めません。
最初に考えるのは、
この方にとって最終的に何が一番いいのか
です。
まだ売るかどうか決めていない。
家族にも話せていない。
近所にも知られたくない。
その段階でもご相談いただいて構いません。
まず、
住宅ローン残高と家の価値を確認します。
数字を知るだけなら、家は売れません。
査定したから売却しなければならない、
ということもありません。
調べて、
選択肢を確認して、
そのうえで決めればいいのです。
士業会は「提携先」ではありません
株式会社エルライフは、
一般社団法人 士業会と連携しています。
ここには、
弁護士、
司法書士、
税理士、
行政書士、
土地家屋調査士など、
それぞれ違う専門分野を持つ人
がいます。
社員ではありません。
案件を回すためだけの紹介先でもありません。
一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考える、チーム・仲間
という関係です。
住宅ローンのことを、
誰にも知られたくないと思っている方が、
弁護士、
税理士、
司法書士、
不動産会社を一軒ずつ回り、
そのたびに同じ事情を説明する。
それ自体が大きな精神的負担になります。
だから、
必要な専門家が必要な場面で加わる形にしています。
自己破産について
「自己破産しないほうがいい」とは申し上げません。
必要なケースは実際にあります。
そして、
その判断をするのは弁護士です。
ただ、
家を売るから自己破産。
住宅ローンを滞納したから自己破産。
そう単純に決めるものでもありません。
家を売ったら、
実際にいくら債務が残るのか。
他に借金はあるのか。
収入はいくらあるのか。
今後の生活はどうなるのか。
それを確認してからです。
売却ありき、自己破産ありきで結論を決めない。
これが私たちの考え方です。
よくある相談場面
実際の個別事例ではなく、
一般的に起こり得るケースとしてご紹介します。
ケース1 家族に言えないまま時間が過ぎた
住宅ローンの返済が苦しくなったものの、
家族に言えず、
一人で数か月抱えていた。
その間にも手続きが進み、
相談したときには、使える方法が減っていた
というケースです。
ケース2 配偶者が連帯保証人だった
本人は、
自分だけの問題だと思っていた。
しかし契約書を確認すると、
配偶者が連帯保証人になっていた。
住宅ローンの問題が配偶者にも直接関係することが分かり、そこで初めて話し合いを始めた
というケースです。
ケース3 突然DMが届いた
複数の不動産会社から、
競売や売却に関するDMが届き、
「どこから情報が漏れたのか」
と不安になった。
確認すると、
登記などの公開情報をもとに営業されていた
というケースです。
専門家コメント 宅地建物取引士 松本
「近所に知られたくありません」
この言葉を、
住宅ローンのご相談で本当によく聞きます。
そのお気持ちは、よく分かります。
長く住んできた家です。
ご近所付き合いもあります。
お子さんの友達もいます。
住宅ローンが払えなくなったことまで知られたくないと思うのは、自然なことだと思います。
ただ、
ここで一つだけ、
順番を間違えないでください。
任意売却であれば、
販売そのものは普通の不動産売却と大きく変わりません。
近所の方が見ても、
通常は、
「家を売っているんだな」
ということまでしか分かりません。
ところが、
競売まで進むと、
裁判所の手続きになります。
BITで物件情報が公開され、
3点セットが閲覧できる状態になります。
現況調査も行われます。
知られたくないから動かないでいると、結果として自分ではコントロールできない形で情報が公開されてしまうことがあります。
だから私は、
知られたくない方ほど、早く相談してください
と申し上げています。
それから、
ご家族に言えないという方。
責めるつもりはありません。
何か月も一人で抱えてこられた方に、
何人もお会いしてきました。
ただ、
伝えるときには、
できれば数字を持って話してください。
「住宅ローンが払えない」
だけでは、
ご家族も不安になります。
でも、
「ローンはこれだけ残っている。家はこれくらいで売れそう。次はこのくらいの家賃で暮らせそう」
と説明できれば、
話はまったく違います。
そして、
その数字を出すために査定をしても、
家を売る必要はありません。
調べることと、
売ることは別です。
まず、
今の状態を知る。
そこからで大丈夫です。
大事なのは、
どこの会社に相談するかだけでなく、誰を自分の味方につけるのか
ということです。
知られたくないという気持ちも含めて、
都合の悪いことまで一緒に考えてくれる人
を選んでください。
よくあるご質問
Q1. 任意売却をすると、近所に知られますか。
任意売却は、
通常の不動産売却と同じような方法で販売します。
そのため、
住宅ローンの滞納が理由で売っていることまで、
外から分かるとは限りません。
Q2. 競売では何が公開されますか。
BITなどで、
競売物件の情報を確認できます。
物件明細書、
現況調査報告書、
評価書などの3点セットが公開され、
間取りや写真などが掲載される場合があります。
Q3. 執行官の現況調査は断れますか。
競売手続きに基づく現況調査ですので、
単に拒否することで手続き自体を止めることはできません。
Q4. 家族に知られずに任意売却できますか。
家族が、
共有者、
連帯債務者、
連帯保証人などになっている場合は、
その方にも手続きが関係します。
完全に知らせず進めることはできません。
Q5. 勤務先に知られますか。
住宅ローンの滞納だけで、
通常、
勤務先へ連絡される仕組みではありません。
ただし、
給与差押えなど別の法的手続きが行われた場合は、勤務先が関係することがあります。
Q6. 不動産会社からDMが届きました。情報が漏れていますか。
必ずしも情報漏えいではありません。
不動産登記などは公開情報です。
その情報をもとに営業している不動産会社もあります。
まとめ
- 任意売却は、通常の不動産売却と同じような方法で販売する
- そのため、住宅ローン滞納が理由だと近所から分かりにくい
- 競売では、BITなどで物件情報が公開される
- 3点セットには間取りや写真などが含まれる場合がある
- 執行官による現況調査が行われる
- 任意売却でも、共有者・連帯保証人・連帯債務者などには関係する
- 登記は公開情報
- 知られたくないという理由で放置すると、かえって公開性の高い競売まで進むことがある
- 家族に話すときは、住宅ローン残高・売却額・次の住まいという数字を持つ
- 調べることと、売ることは別
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