結論
まず、住宅ローンの契約書を見て、自分がどの立場なのかを確認してください。
住宅ローンで夫婦が関わる形は、主に次の4つです。
| 立場 | 返済義務 | 団信 | 住宅ローン控除 |
|---|---|---|---|
| 単独債務者 | 自分が負う | 加入対象 | 要件を満たせば対象 |
| 連帯債務者 | 最初から返済義務を負う | 商品による | 要件を満たせば対象 |
| 連帯保証人 | 主債務者が返済しない場合に責任を負う | 原則として借主としての団信対象ではない | 原則対象外 |
| ペアローン | それぞれ自分のローンを負う | それぞれ加入するのが一般的 | それぞれ要件を満たせば対象 |
特に注意していただきたいのが、
連帯保証人です。
住宅ローンの借主ではありませんから、通常は借主としての団信や住宅ローン控除の対象にはなりません。
しかし、
主債務者が返済しなくなれば、重い返済責任を負います。
しかも、普通の保証人に認められている一部の権利が、連帯保証人にはありません。
「保証人だから、借りた本人より責任はずっと軽い」
と思っていると、問題が起きたときに大きな違いが出ます。
はじめに
「自分は保証人だと思っていたら、連帯債務者だった」
「夫婦で借りたつもりだったけれど、実際には妻は連帯保証人だった」
住宅ローンのご相談では、こうしたことがあります。
家を買ったときは、
- 物件を決める
- 住宅ローンを申し込む
- 契約をする
- 引越しをする
と、たくさんの手続きがあります。
その中で、
金融機関から説明を受け、言われるまま署名した
という方も少なくありません。
そのときには、
まさか離婚するとは思っていなかった。
まさか収入が減るとは思っていなかった。
まさか相手が住宅ローンを払わなくなるとは思っていなかった。
だから、
自分が「連帯債務者」なのか「連帯保証人」なのかを深く意識していなかった
としても、不思議ではありません。
しかし、
問題が起きたときには、
この違いが非常に大きくなります。
連帯債務と連帯保証の決定的な違い
1.いつ返済義務を負うのか
連帯債務者
最初から自分自身が債務者です。
一つの住宅ローンについて、
主債務者とともに返済義務を負います。
「相手が払えなくなったら初めて責任が発生する」
という立場ではありません。
最初から、自分の借金でもあります。
連帯保証人
連帯保証人は、
主債務者が負っている住宅ローンについて、
主債務者が約束どおり返済しない場合に、その債務を履行する責任を負います。
言葉だけを見ると、
連帯債務者より軽そうに感じます。
しかし、
次の違いが非常に重要です。
2.連帯保証人には、普通の保証人にある抗弁権がありません
普通の保証人には、
一定の条件のもとで、
次のような権利があります。
催告の抗弁権
「まず借りた本人に請求してください」
と言える権利です。
検索の抗弁権
主債務者に返済できる財産があり、
容易に強制執行できることを証明した場合、
「まず本人の財産から回収してください」
と求めることができる権利です。
しかし、
連帯保証人には、これらの抗弁権がありません。
そのため、
主債務者が約束どおり返済しなくなれば、
債権者から連帯保証人に対して請求されることがあります。
「まず夫に請求してください」
だけでは拒めないのです。
住宅ローンなどの融資で保証人を求められる場合、
連帯保証人とされているケースは少なくありません。
契約書で確認してください。
3.団信の扱いが違います
ここは、
非常に重要です。
団信とは、
団体信用生命保険
のことです。
住宅ローンの債務者が死亡した場合や、
所定の高度障害状態などになった場合に、
保険金によって住宅ローンが返済される仕組みです。
連帯保証人の場合
連帯保証人は、
住宅ローンそのものの借主ではありません。
そのため通常、
借主として団信に加入する立場ではありません。
たとえば、
夫が住宅ローンの債務者。
妻の収入を合算し、
妻が連帯保証人になっているケースを考えます。
夫が亡くなった場合
夫が団信の保障対象であれば、
保険によって住宅ローン残高が返済されることがあります。
妻が亡くなった場合
妻は連帯保証人であり、
住宅ローンの団信加入者ではないため、
妻が亡くなったことだけを理由に住宅ローンがなくなるわけではありません。
ここは、
収入合算を利用したご夫婦にとって、
非常に大きな違いです。
連帯債務の場合
連帯債務型の住宅ローンは、
団信の仕組みが商品によって異なります。
主債務者だけが保障対象となる商品もあれば、
夫婦双方を保障するタイプもあります。
ですから、
「連帯債務だから必ず二人とも団信に入っている」
とは限りません。
必ず、
金融機関または団信の契約内容を確認してください。
4.住宅ローン控除の扱いも違います
住宅ローン控除についても、
立場によって違いがあります。
連帯保証人
原則として、
住宅ローンの借主ではないため、住宅ローン控除の対象にはなりません。
夫婦2人の収入を合算して住宅ローン審査を受けていても、
妻が単なる連帯保証人であれば、
妻自身の借入として住宅ローン控除を受けることはできません。
連帯債務者
一定の要件を満たせば、
それぞれの負担割合等に応じて住宅ローン控除の対象になることがあります。
ペアローン
夫婦が別々に住宅ローンを組むため、
それぞれが要件を満たせば住宅ローン控除の対象になります。
ペアローンとは何か
ペアローンは、
夫婦がそれぞれ別々に住宅ローンを契約する方法です。
たとえば、
- 夫が3,000万円
- 妻が2,000万円
を借り、
合計5,000万円で住宅を購入する形です。
通常、
それぞれが自分のローンの債務者となります。
そのため、
- それぞれ団信に加入する
- それぞれ住宅ローン控除を受ける
- それぞれ不動産の持分を持つ
という形になるのが一般的です。
ただし、
互いに相手方のローンについて連帯保証人になる商品も多くあります。
つまり、
夫のローンと妻のローンは別でも、
完全に無関係ではありません。
離婚すると、この仕組みが大きな問題になります。
妊娠中の収入合算について
金融機関によっては、
妊娠・出産による休職や収入変動などを踏まえて、
収入合算や連帯保証の審査上の取り扱いが変わる場合があります。
ただし、
これは金融機関ごとに審査基準が違います。
「妊娠しているから必ず連帯保証人になれない」
と一律に決まっているわけではありません。
これから住宅ローンを組む方は、
金融機関に確認してください。
自分の立場を確認する方法
1.住宅ローンの契約書を見る
まず、
住宅ローンの契約書を探してください。
一般に、
金銭消費貸借契約証書
などの名称になっています。
そこに、
あなたの名前がどの立場で記載されているかを確認します。
- 債務者・借主
- 連帯債務者
- 連帯保証人
ここを見るのが一番確実です。
2.団信の契約を確認する
団信の加入証明や、
住宅ローン契約時の書類を確認してください。
ただし、
団信に入っていないからといって、
必ず連帯保証人とは限りません。
商品によって団信の仕組みが違うからです。
契約書と合わせて確認してください。
3.住宅ローン控除を確認する
確定申告や年末調整で、
住宅ローン控除を受けているか確認してください。
ただし、
これも単独で判断せず、
契約書と合わせて確認することが大切です。
4.登記事項証明書を見る
法務局で、
登記事項証明書を取得できます。
ここでは、
- 誰が所有者か
- 持分は何分の何か
- どんな抵当権が付いているか
を確認できます。
ただし、
所有者であることと、住宅ローンの債務者であることは別問題です。
持分を持っているから、
必ず住宅ローンの債務者とは限りません。
5.分からなければ金融機関に聞く
一番簡単です。
借入先に、
「私はこの住宅ローンで、連帯債務者ですか、連帯保証人ですか」
と聞いてください。
恥ずかしい質問ではありません。
むしろ、
離婚や返済問題が起きてからであれば、
最初に確認すべきことです。
問題が起きたとき、立場によってどう違うのか
| 状況 | 連帯債務者 | 連帯保証人 |
|---|---|---|
| 相手が返済しない | 自分自身も債務者なので返済義務がある | 保証責任を追及される可能性がある |
| 相手が亡くなった | 団信の内容による | 主債務者の団信が適用されればローンが返済されることがある |
| 自分が亡くなった | 団信の内容による | 自分の死亡だけで主債務が消えるわけではない |
| 離婚した | 自動的には外れない | 自動的には外れない |
| 住宅ローン控除 | 要件を満たせば対象 | 原則対象外 |
最も重要なのは、
離婚しても契約は自動的に変わらない
ということです。
離婚は、
夫婦関係を解消する手続きです。
住宅ローンは、
金融機関との契約
です。
これは別の話です。
離婚協議書に書けば外れるのか
たとえば、
離婚協議書や公正証書に、
「住宅ローンは夫がすべて支払う」
と書いたとします。
夫婦の間では、
重要な取り決めになります。
しかし、
金融機関がその契約に同意したことにはなりません。
あなたが連帯保証人や連帯債務者である限り、
金融機関との契約上の責任は残ります。
離婚協議書だけで住宅ローンから外れることはできません。
連帯債務・連帯保証から外れたい場合
方法は限られます。
方法1 借り換え
残る側が、
別の金融機関で単独の住宅ローンを組み、
現在の住宅ローンを完済します。
新しい住宅ローンから、
あなたが外れていれば、
責任を切ることができます。
ただし、
審査があります。
一人の収入だけでは借入額に届かない場合、
借り換えができないこともあります。
方法2 金融機関に変更を認めてもらう
別の保証人を立てるなどして、
金融機関に変更を承諾してもらう方法です。
ただし、
金融機関が承諾するかどうかは別問題です。
元の契約より返済リスクが高くなる変更を、
簡単に認めるとは限りません。
方法3 住宅ローンを完済する
最も確実です。
住宅ローン自体がなくなれば、
連帯債務や連帯保証の問題も終わります。
方法としては、
- 自己資金で完済
- 通常売却して完済
- 借り換えて完済
などがあります。
売っても完済できない場合
売却価格より住宅ローン残高のほうが多い、
いわゆるオーバーローンの場合、
普通に売却しても住宅ローンを完済できません。
その場合、
返済に行き詰まっている状況などでは、
任意売却
という方法を検討することがあります。
任意売却とは、
債権者等の承諾を得て、
住宅ローンを全額返せなくても抵当権を外してもらい、
不動産を売却する方法です。
ただし、
債権者等の承諾が必要です。
不動産会社だけで決められるものではありません。
私たちに決められないこと
正直に書いておきます。
次のことは、
私たちの一存では決められません。
- 連帯債務者から外れられるかどうか
- 連帯保証人から外れられるかどうか
- 借り換えの審査が通るかどうか
- 別の保証人を認めてもらえるかどうか
- 任意売却に応じてもらえるかどうか
- 団信がどこまで適用されるか
- 法的な対応を取るべきかどうか
- 税務上どのような取り扱いになるか
金融機関、
保険会社、
債権者、
弁護士、
税理士など、
それぞれ判断する人が違います。
ですから、
「保証人から外せます」
とは簡単には申し上げません。
確認しなければ分からないからです。
では、誰に相談すればいいのか
まず、
自分が連帯債務者なのか、
連帯保証人なのかを確認するだけなら、
契約書と金融機関
です。
しかし、
そこから先、
- 離婚する
- 相手が払わない
- 家を売る
- 借り換える
- 名義を変える
- 残債を整理する
という話になると、
複数の分野が関係します。
金融機関は、
住宅ローン契約を判断します。
弁護士は、
離婚条件や法的整理を検討します。
税理士は、
税務を確認します。
司法書士は、
登記を扱います。
不動産会社は、
今いくらで家が売れるのか
を出します。
相談する側から見れば、
問題は一つです。
「この住宅ローンとの関係を、どう整理すれば前に進めるのか」
です。
株式会社エルライフの考え方
私たちは不動産会社ですが、
「不動産会社だから家を売る」
というところから始めません。
まず、
現在の住宅ローン契約を確認します。
次に、
家がいくらで売れそうなのか。
住宅ローンはいくら残っているのか。
借り換えの可能性はあるのか。
離婚が絡んでいるのか。
次の住まいはどうするのか。
その全部を見ます。
ただし、
このテーマについて一つだけはっきり言えることがあります。
住宅ローンそのものが完済されれば、連帯債務・連帯保証という住宅ローン上の責任も終わります。
だから、
住宅ローンから外れたいという問題は、
不動産をどうするかという問題にもつながっている
のです。
士業会は「提携先」ではありません
株式会社エルライフは、
一般社団法人 士業会と連携しています。
ここには、
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 行政書士
- 土地家屋調査士
など、
それぞれ違う専門分野を持つ人がいます。
社員ではありません。
案件を回すためだけの紹介先でもありません。
一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考えるチーム・仲間
という関係です。
「私は連帯保証人です」
と分かったところで、
問題は終わりません。
そこから、
- 外れられるのか
- 離婚条件はどうするのか
- 家はいくらで売れるのか
- 税金はどうなるのか
- 登記はどうするのか
という話になります。
問題が一つなら、考える側も一つのチームであるべきだ
と思っています。
自己破産について
「自己破産しないほうがいい」とは申し上げません。
必要なケースは実際にあります。
そして、
その判断をするのは弁護士です。
たとえば、
相手が返済を止め、
連帯保証人に大きな請求が来ている場合。
住宅ローンだけでなく、
他の債務まで抱えている場合。
法的整理が必要になることがあります。
ただし、
先に結論を決める必要はありません。
まず、
家を整理すると実際にいくら残るのか
を確認します。
その数字を見たうえで、
必要なら弁護士と検討します。
売却ありき、自己破産ありきで結論を決めない。
これが私たちの考え方です。
よくある相談場面
実際の個別事例ではなく、
一般的に起こり得るケースとしてご紹介します。
ケース1:連帯保証人だと思っていた
離婚の相談で契約書を確認したところ、
実際には連帯債務者だった
というケースです。
「相手が払えなくなったら自分に来る」
のではなく、
最初から自分自身の債務でもある
ことが分かりました。
ケース2:団信を確認していなかった
収入合算で住宅ローンを組んでおり、
妻が連帯保証人になっていた。
しかし、
妻自身は住宅ローンの団信保障対象ではない
ことを後から確認した、
というケースです。
ケース3:住宅ローン控除の違いを知らなかった
夫婦2人の収入を前提に住宅ローンを組んでいたため、
二人とも住宅ローン控除を使えると思っていた。
しかし、
一方は連帯保証人だったため、
住宅ローン控除の対象になる立場ではなかった
ことが分かった、
というケースです。
専門家コメント 宅地建物取引士 松本
住宅ローンのご相談を受けたとき、
私が最初にお聞きすることの一つが、
「あなたは、この住宅ローンでどういう立場ですか」
ということです。
はっきり答えられない方は、
決して珍しくありません。
無理もないと思います。
家を買ったときは、
これから始まる生活のことを考えています。
離婚することや、相手が払わなくなることまで考えて契約書に判を押す方は、ほとんどいません。
だから、
問題が起きた今、
初めて確認すればいいのです。
特に、
連帯保証人
という言葉には注意してください。
「保証」という言葉から、
何となく補助的な立場だと思われる方がいらっしゃいます。
しかし、
連帯保証には、
「まず本人に請求してください」
と言える権利がありません。
主債務者が返済しなくなれば、
重い責任を負います。
そして、
収入合算で連帯保証人になっている場合、
連帯保証人自身が亡くなったからといって、住宅ローンがなくなるわけではありません。
住宅ローン控除についても、
借主とは扱いが違います。
だから、
まず契約書を見てください。
分からなければ、
金融機関に電話して、
「私は連帯債務者ですか。連帯保証人ですか」
と聞いてください。
恥ずかしいことではありません。
むしろ、
これを曖昧にしたまま離婚や売却の話を進めるほうが危険です。
そして、
もし、
「この住宅ローンとの関係を完全に終わらせたい」
ということであれば、
結局、
住宅ローンそのものをどうするのかという話になります。
借り換えるのか。
売るのか。
完済できるのか。
オーバーローンなのか。
そこで、不動産の数字が必要になります。
調べることと、
売ることは別です。
まず、
今の家がいくらなのか。
住宅ローンはいくら残っているのか。
そこから始めてください。
大事なのは、
どこの会社に相談するかだけでなく、誰を自分の味方につけるのか
ということです。
よくあるご質問
Q1. 連帯債務と連帯保証は、どう違いますか。
連帯債務者は最初から債務者として返済義務を負います。
連帯保証人は、
主債務者が返済しない場合に保証責任を負います。
ただし、
連帯保証人には普通の保証人にある催告の抗弁権や検索の抗弁権がありません。
Q2. 連帯保証人は団信に入れますか。
通常、
住宅ローンの借主としての団信には加入しません。
一方、
連帯債務型の商品では、
団信の保障範囲が金融機関・商品によって異なります。
契約内容を確認してください。
Q3. 連帯保証人は住宅ローン控除を受けられますか。
原則として、
住宅ローンの借主ではないため対象になりません。
連帯債務者やペアローンの借主は、
それぞれ要件を満たせば対象になる場合があります。
Q4. 離婚したら、連帯保証人・連帯債務者から外れますか。
自動的には外れません。
住宅ローンは金融機関との契約だからです。
外れるには、
借り換えや契約変更などについて、
金融機関の承諾が必要になります。
Q5. 自分がどちらなのか分かりません。
まず、
住宅ローンの契約書を確認してください。
分からなければ、
借入先の金融機関に、
「私は連帯債務者ですか、連帯保証人ですか」
と確認してください。
Q6. 妊娠中は連帯保証人になれないのですか。
妊娠・出産による収入変動などを踏まえ、
収入合算や保証の審査上の取り扱いが変わる金融機関はあります。
ただし、
一律のルールではありません。
金融機関ごとに確認してください。
まとめ
- 連帯債務者は、最初から自分自身も住宅ローンの債務者
- 連帯保証人は、主債務者が返済しない場合に保証責任を負う
- 連帯保証人には催告の抗弁権・検索の抗弁権がない
- 連帯保証人は、原則として借主としての団信・住宅ローン控除の対象ではない
- 連帯債務の団信は商品によって保障内容が違う
- ペアローンは、夫婦それぞれが別々に住宅ローンを契約する
- 離婚しても、連帯債務・連帯保証から自動的には外れない
- 離婚協議書だけでは、金融機関との契約は変わらない
- 確認するものは、契約書・団信・住宅ローン控除・登記・金融機関
- 住宅ローンとの関係を確実に終えるには、住宅ローンそのものを完済することが最も明確
- まず家の売却見込額と住宅ローン残高を確認する
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