結論
競売開始決定通知が届いた段階では、まだ時間があります。
競売開始決定の後、執行官による現況調査、評価、期間入札の決定へと進みます。この間に数ヶ月かかることもあります。
実際の相談には、「5月に競売開始決定、6月に現況調査、その後半年経過して、いつ入札期間になってもおかしくない」という例もあります。つまり、開始決定から入札まで半年以上かかることもあるということです。
では、いつが期限なのでしょうか。
法律上の大きな分かれ目は、買受けの申出が行われる段階です。買受けの申出があった後に競売申立てを取り下げるには、民事執行法76条1項により、最高価買受申出人または買受人等の同意が必要になります。
しかし、「開札の日まで動けばいい」という意味ではありません。
任意売却には、買主を探す時間だけでなく、債権者との調整、売却代金の配分確認、抵当権や差押えの抹消準備、売買契約、決済までの日数が必要です。
つまり、本当に動かなければならない期限は、開札日よりずっと手前です。
はじめに
裁判所から、特別送達で封書が届いた。
「担保不動産競売開始決定」という文字を見て、頭が真っ白になられた方もいらっしゃると思います。
まず、この通知は「今日から家を出てください」という通知ではありません。
裁判所で、競売の手続きが始まったことを知らせるものです。そして、この段階なら、まだできることが残っている場合があります。
ただし、大事なのは残り時間の測り方です。
「まだ何ヶ月あるから大丈夫」ではありません。
これから必要になる手続きを、最後の日から逆算して考える必要があります。
何が起きたのか
住宅ローンなどの債権者が裁判所へ競売を申し立て、裁判所がそれを受理し、不動産競売の手続きを開始する決定をしたということです。
同時に、不動産には**「差押」**の登記が入ります。
この登記は公開情報です。そのため、この後、知らない不動産会社からDMが届いたり、訪問を受けたりすることがあります。
個人情報が漏れたわけではありません。
登記情報を確認した会社が、営業をしている場合があります。
だからといって、届いたDMや訪問先の会社に、その場で依頼する必要はありません。
これからの流れ
競売開始決定後は、一般的に次のように進みます。
1.競売開始決定
今、この段階です。
裁判所から競売開始決定通知が届き、不動産に差押えの登記が入ります。
2.執行官による現況調査
裁判所の執行官が不動産の状態や使用状況を確認します。
室内の状況や占有関係などを調査し、写真撮影なども行われます。
法律に基づく調査なので、原則として拒否することはできません。
3.評価・売却基準価額の決定
不動産鑑定士による評価や執行官の調査などをもとに、裁判所が売却基準価額を決めます。
競売は通常の不動産売却とは条件が異なるため、一般市場で売却する場合より低い価格になる傾向があります。
4.期間入札通知書が届く
ここが非常に重要です。
期間入札通知書には、
- 入札期間
- 開札期日
- 売却決定期日
などが記載されています。
この通知書は、入札開始のおおむね1ヶ月から1ヶ月半ほど前に届くことがあります。
ここまで来ると、具体的な日付が見えるようになります。
5.公告
期間入札が始まる前に公告が行われます。
東京地方裁判所民事執行センターの例では、入札期間開始日の15日前に公告書が掲示されます。
競売物件の情報は、裁判所のBIT(不動産競売物件情報サイト)などでも公開されます。
6.期間入札
期間入札は、通常8日間程度です。
この期間中に購入希望者が入札します。
7.開札期日
入札された金額を裁判所で開札し、最高額を提示した人が最高価買受申出人になります。
8.売却許可決定
一般的には、開札後に売却許可決定の手続きへ進みます。
問題がなければ売却許可決定が出され、その後確定すると、買受けの手続きがさらに進みます。
9.代金納付
売却許可決定が確定した後、買受人が残代金を納付します。
残代金納付期限は、売却許可決定確定後からおおむね30日程度となる場合があります。
10.所有権移転
買受人が代金を納付すると、所有権が買受人へ移ります。
その後、元所有者が住み続けている場合は、引渡しの問題へ移っていきます。
残り時間の測り方
まだ期間入札通知書が届いていない場合
まだ動ける時間が残っている可能性があります。
ただし、
「通知が来ていない=まだ大丈夫」
ではありません。
いつ期間入札が決まるかは、案件や裁判所の進行状況によって変わります。
開始決定からかなり時間がかかる場合もあれば、比較的早く進む場合もあります。
だからこそ、期間入札通知書がまだ届いていない時期が、一番動きやすい時期なのです。
「日付が決まってから考える」のではなく、決まる前に準備を始めることが重要です。
期間入札通知書が届いた場合
ここからは、具体的に日付から逆算できます。
通知書には入札期間と開札期日が書かれています。
そして、この通知が届いたときには、入札開始まで1ヶ月〜1ヶ月半程度しか残っていない場合があります。
つまり、ここから任意売却を始めようとしても、
- 債権者との協議
- 売却価格の確認
- 販売活動
- 買主探し
- 配分の確認
- 抵当権や差押えの抹消調整
- 売買契約
- 決済準備
を短期間で終わらせなければなりません。
この段階になると、かなり厳しくなることがあります。
開札日から逆算してください
考え方は、この順番です。
| 時期 | 必要なこと |
|---|---|
| 開札期日 | 法律上、大きく状況が変わる地点 |
| その手前 | 決済・引渡し |
| さらに手前 | 抵当権・差押えの抹消書類準備 |
| さらに手前 | 債権者等との配分確認 |
| さらに手前 | 売買契約 |
| さらに手前 | 買主を決める |
| さらに手前 | 売却活動 |
| さらに手前 | 債権者との売却条件の確認 |
| 今 | 相談・状況確認 |
つまり、本当の期限は開札日ではありません。
「買主をいつまでに決めなければならないか」
ここが実務上の非常に重要な日になります。
不動産は、売りに出した翌日に買主が決まるとは限りません。
一般的な売却でも、売り出しから成約まで数ヶ月かかることがあります。
だから、
「開札まで3ヶ月あるから、あと2ヶ月待っても大丈夫」
とは考えないでください。
その3ヶ月の中には、買主を探した後の手続き時間も含まれているからです。
任意売却が間に合うための条件
条件1 残り時間があること
期間入札通知書が届く前であれば、任意売却を検討できる時間が残っている可能性があります。
届いた後は、一気に厳しくなります。
ただし、届いていないから必ず間に合うわけでも、届いたから必ず無理というわけでもありません。
案件ごとに逆算する必要があります。
条件2 債権者が任意売却に応じること
任意売却は、所有者だけの意思で進められるものではありません。
売却代金で住宅ローンを完済できず、抵当権を外してもらう必要がある場合、債権者等の承諾が必要です。
そして、競売申立てを取り下げるかどうかを決めるのも、基本的には申立債権者です。
不動産会社が「止める」と決められるものではありません。
条件3 関係者の協力が得られること
任意売却では、住宅ローンの債権者だけを見ればいいとは限りません。
例えば、
- 共有名義なら共有者
- 後順位抵当権者
- 税金の差押えをしている役所
- その他の担保権者
などが関係する場合があります。
関係者が増えるほど、確認と調整に必要な時間も増えます。
条件4 買主が現れること
ここは、誰にも確約できません。
どれだけ準備をしても、買主が現れなければ売却は成立しません。
だからこそ、買主を探すための時間をできるだけ長く確保することが大切です。
条件5 売却条件が折り合うこと
任意売却では、売り出し価格や売却条件について債権者等との調整が必要になります。
売主が、
「この値段で売りたい」
と言えば、そのまま売れるわけではありません。
一方、価格が高すぎると買主が見つかりません。
債権者が認める価格と、市場で実際に売れる価格を合わせていく必要があります。
今週やっていただきたい3つのこと
1.裁判所から届いた書類を全部そろえる
捨てないでください。封筒も残してください。
特に確認したいのは、
- 競売開始決定通知
- 事件番号
- 裁判所名
- 申立債権者
- 日付
- 期間入札通知書が届いているか
です。
事件番号は、その後裁判所へ確認するときにも重要になります。
2.登記事項証明書を確認する
登記事項証明書を取得すると、誰が関係しているのかが分かります。
見るのは主に、
権利部(甲区)
- 所有者
- 共有持分
- 差押え
- 競売開始決定
権利部(乙区)
- 抵当権者
- 後順位の抵当権
- 根抵当権など
です。
税金など別の差押えが入っていないかも確認してください。
関係者の数が、そのまま調整に必要な時間へ影響することがあります。
3.今売ったら、いくらになるかを確認する
調べることと、売ることは別です。
この数字が非常に重要です。
例えば、
- 住宅ローン残債 2,500万円
- 売却見込額 2,300万円
なのか、
- 住宅ローン残債 2,500万円
- 売却見込額 1,500万円
なのかでは、任意売却の組み立ても大きく変わります。
まず数字を出してください。
売却を決めるのは、その後です。
知っておいていただきたいこと
自分で競売に入札して買い戻すことはできません
民事執行法第68条では、
「債務者は、買受けの申出をすることができない」
と定められています。
つまり、債務者本人が、自分の家の競売に入札して買い戻すことはできません。
ここを誤解されている方がいらっしゃいますので、注意してください。
買受けの申出後は状況が変わります
民事執行法第76条第1項では、買受けの申出があった後に強制競売の申立てを取り下げる場合、最高価買受申出人または買受人等の同意が必要になる旨が定められています。
つまり、競売が開札まで進むと、取下げのハードルは大きく上がります。
だから、
「開札までまだある」
ではなく、
「開札までに必要な手続きを全部終えられるか」
で考えなければなりません。
「必ず競売を止められます」と言う相手には注意してください
競売の申立てを取り下げるかどうかを決めるのは、債権者等です。
不動産会社ではありません。
「うちなら止められます」
「絶対に間に合います」
と言われたら、
「取り下げるかどうかは、誰が決めるのですか」
と聞いてください。
ここを正確に説明してくれる相手かどうかは、非常に重要です。
間に合わない場合
正直に書きます。
間に合わない場合もあります。
残された期間が短すぎる。
関係者が多く、調整時間が足りない。
買主を探す時間がない。
債権者等の承諾が得られない。
そうした場合に、
「なんとかします」
と言い続けることが、ご本人のためになるとは思いません。
その場合は、次の生活へ準備を切り替えることも大切です。
- 次の住まいを探す
- 引越し費用を準備する
- いつまで住めるのか確認する
- 残る債務をどうするか整理する
- 必要であれば弁護士に相談する
競売で買受人へ所有権が移った後も、直ちにその日に強制退去となるわけではありません。
引渡命令や強制執行には手続きがあります。
しかし、だからといって安心して待つのではなく、残された時間を次の生活の準備に使うことが大切です。
私たちに決められないこと
正直に書いておきます。
次のことは、私たちの一存では決められません。
- 競売申立てを取り下げるかどうか(債権者等の判断です)
- 任意売却に応じてもらえるかどうか(債権者等の判断です)
- 売り出しの価格や条件(債権者等の意向が反映されます)
- 引越し費用を確保できるかどうか(債権者等との協議・承諾によります)
- 税金の差押えを解除してもらえるかどうか(役所の判断です)
- 後順位抵当権者が応じるかどうか(その方の判断です)
- 買主がいつ現れるか
- 裁判所の手続きの進行
「競売は止められます」と、確認する前から申し上げることはできません。
では、誰に相談すればいいのか
競売開始決定まで進んだ場合、問題は不動産だけではありません。
- 不動産会社は、売却価格と売却に必要な期間を確認します
- 司法書士は、登記の問題を確認します
- 弁護士は、法的整理や残債の問題を検討します
- 税金の差押えなどがあれば、役所との協議も必要になります
そして、この段階では「誰に相談するか」だけでなく、「同時に動けるか」が重要です。
別々に相談し、一つの返事を待ってから次へ進んでいると、時間を失うことがあります。
相談する側から見れば、問題は一つです。
「この家と住宅ローンをどう整理して、家族の生活を守るのか」
株式会社エルライフの考え方
私たちは不動産会社ですが、「不動産会社だから家を売る」というところから始めません。
競売開始決定通知を持って来られた方の場合、最初に見るのは物件ではありません。
まず、書類です。
どの裁判所か。
事件番号は何か。
競売開始決定はいつ出たのか。
現況調査は終わっているか。
期間入札通知書は届いているか。
開札日は決まっているか。
まず、今どこにいるのかを確認します。
そのうえで、開札日から逆算して、
「買主をいつまでに決めなければならないのか」
を考えます。
間に合う可能性があるなら、そこから必要な作業を組み立てます。
間に合わないと判断すれば、そうお伝えします。
「なんとかします」と言って時間を使わせ、結果的に競売になれば、その期間に次の住まいを探せたかもしれません。
だから、できることと、できないことを最初に分けることが大切だと考えています。
士業会は「提携先」ではありません
株式会社エルライフは、一般社団法人 士業会と連携しています。
ここには、弁護士、司法書士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など、それぞれ違う専門分野を持つ人がいます。
社員ではありません。
案件を回すための紹介先でもありません。
一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考える、チーム・仲間という関係です。
競売開始決定まで進んでいる場合は、時間の管理そのものが大切になります。
登記の問題、税金の差押え、残った債務、任意売却の進行。
必要な専門家が、必要な場面で加わりながら整理していきます。
自己破産について
「自己破産しないほうがいい」とは申し上げません。
必要なケースは実際にあります。
そして、その判断をするのは弁護士です。
大切なのは、最初から
「家を売る」
「自己破産する」
と結論を決めることではありません。
不動産を整理した場合、いくら債務が残るのか。
収入はいくらあるのか。
今後の生活は成り立つのか。
それを確認したうえで、必要なら弁護士と法的整理を検討します。
売却ありき、自己破産ありきで結論を決めない。
これが私たちの考え方です。
よくある相談場面
※以下は特定の相談者の実例ではなく、一般的に起こり得るケースです。
ケース1 まだ時間があった
競売開始決定通知が届いて、比較的早い段階で相談された。
期間入札通知書はまだ届いておらず、売却活動や関係者との調整に使える時間が残っていたというケースです。
競売開始決定通知が届いたからといって、その時点で必ず手遅れというわけではありません。
ケース2 関係者が多かった
登記事項証明書を確認したところ、住宅ローンの抵当権だけではなく、後順位の抵当権と税金の差押えも入っていた。
関係者が想定より多く、調整に時間が必要だったというケースです。
だからこそ、早い段階で登記を確認する必要があります。
ケース3 時間を確保できなかった
期間入札通知書が届いた後に相談され、開札期日がかなり近づいていた。
買主探しだけでなく、債権者等との協議や抹消準備まで含めて逆算すると、必要な時間を確保できる見込みが立たなかったというケースです。
この場合、できることは限られます。
専門家コメント 宅地建物取引士 松本
競売開始決定通知を持って来られる方から、よく聞かれます。
「もう終わりですか」
私はまず、**「書類を見せてください」**と申し上げます。
競売開始決定通知が届いたという事実だけでは、残された時間は分かりません。
現況調査は終わっているのか。
期間入札通知書は届いているのか。
開札日は決まっているのか。
そこを確認して初めて、残り時間が見えてきます。
特に重要なのが、期間入札通知書です。
そこに入札期間と開札期日が書かれています。
そして、そこから逆算します。
決済に何日必要か。
抵当権や差押えの抹消準備に何日必要か。
債権者等の確認に何日必要か。
売買契約はいつまでか。
そして最後に、「買主をいつまでに決めなければならないのか」という日付を出します。
その日が、本当の意味での期限です。
「開札まで3ヶ月あります」
と言われても、その3ヶ月を全部、買主探しに使えるわけではありません。
買主を決める期限は、もっと手前にあります。
もう一つ。
ご自身で競売に入札して買い戻すことはできません。
民事執行法には、債務者は買受けの申出をすることができないと定められています。
そして、
「うちなら競売を止められます」
と言い切る会社にも注意してください。
競売を取り下げるかどうかを決めるのは、私たち不動産会社ではありません。
債権者等です。
私たちは、間に合わないと判断すれば、そうお伝えします。
その場合は、残された時間を次の住まいの準備に使っていただくほうがいいこともあります。
「なんとかします」と言って引き受けることは簡単です。
でも、結局間に合わなかったら、困るのはご本人です。
大事なのは、どこの会社に相談するかだけでなく、誰を自分の味方につけるのかということです。
「まだ大丈夫です」ではなく、「何月何日までに、ここまで終わらせる必要があります」と言える相手を選んでください。
よくあるご質問
Q1. 競売開始決定通知が届いたら、すぐ家を出ないといけませんか。
いいえ。
競売の手続きが始まったという通知です。
この後、現況調査、評価、期間入札などの手続きが進みます。
Q2. 残り時間はどう確認すればいいですか。
期間入札が決まると、期間入札通知書に入札期間や開札期日などが記載されます。
ただし、その通知が届くまで待つのではなく、競売開始決定通知が届いた時点から状況を確認してください。
Q3. 開札の日までに動けば間に合いますか。
そうとは限りません。
買主探し、債権者等との調整、売買契約、抹消準備、決済などに時間がかかります。
実際に買主を決める期限は、開札日よりかなり手前になることがあります。
Q4. 自分で競売に入札して買い戻せますか。
できません。
民事執行法第68条により、債務者は買受けの申出をすることができません。
Q5. 現況調査は断れますか。
原則として断ることはできません。
裁判所の競売手続きの中で、法律に基づいて行われる調査です。
Q6. 知らない不動産会社からDMや訪問があります。情報が漏れたのでしょうか。
差押えや競売開始決定などの登記情報は、公開されています。
必ずしも情報漏えいということではありません。
ただし、訪問先で即決を求められたり、「絶対に競売を止められる」などと説明された場合は、その場で契約せず、内容を確認してください。
まとめ
- 競売開始決定通知は、競売手続きが始まったという通知
- その後、現況調査 → 評価 → 期間入札通知 → 公告 → 入札 → 開札と進む
- 期間入札通知書には、入札期間や開札期日などが記載される
- 法律上、買受けの申出後は競売取下げの条件が厳しくなる
- ただし、本当の期限は開札日ではなく、買主を決めなければならない日
- 任意売却には、買主探しだけでなく債権者等との調整・抹消準備・決済期間が必要
- 債務者本人は競売に入札できない
- 今やることは、①裁判所の書類を全部確認する ②登記事項証明書を確認する ③今売ればいくらになるのか調べる
- 「必ず競売を止められます」と言い切る説明には注意する
- 間に合わない場合は、次の住まいと生活の準備へ切り替えることも大切
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