結論
任意売却が進んでいないように感じても、すぐに不動産会社を変える必要はありません。
まず、今の担当者に5つのことを確認してください。
その5つにきちんと答えてもらえて、内容に納得できるのであれば、会社を変える必要はありません。**任意売却は途中で依頼先を変えると、その分だけ時間を失います。**残された時間が短いほど、それは不利に働きます。
問題は、確認しても答えが返ってこない場合です。そのときは、**別の専門家の意見を聞く(セカンドオピニオン)**という選択肢があります。
はじめに
任意売却を依頼して、数ヶ月が過ぎた。
売れたという話は聞かない。担当者からの連絡も減った。内覧に人が来ている様子もない。そして裁判所の期日だけが近づいてくる。
こういうとき、頭に浮かぶのは「この会社で大丈夫だろうか」という不安だと思います。同時に「今さら変えていいのか」「変えたらもっと遅れるのではないか」という迷いもあるはずです。
この記事は、その判断をご自身でできるようにするためのものです。
先にお伝えしておきます。**売れていないことが、そのまま担当者の落ち度とは限りません。**任意売却が思うように進まない理由はいくつもあり、担当者の努力ではどうにもならないものも含まれます。
ですから「売れない=悪い会社」と決めつける前に、今の会社が何をしていて、これから何をするつもりなのかを、あなたが把握している状態を作ってください。順番はそこからです。
任意売却が進んでいないと感じる主な理由
まず、よくある原因を整理します。
売出価格が市場と合っていない
任意売却では、売出価格を売主の希望だけで決められません。債権者の意向が反映されるため、市場の相場より高い価格からスタートすることがあります。高いまま時間が過ぎると、買主が現れないまま期日が近づきます。
販売活動が十分に行われていない
広告の出し方、業者間で物件情報を流通させているかどうかで、反応は変わります。ここは会社によって差が出る部分です。
債権者との調整が止まっている
価格の変更や販売状況の報告が債権者に届いていないと、次の判断が下りてきません。売却活動そのものは動いていても、手続きの側が止まっていることがあります。
関係者が多く、調整に時間がかかっている
後順位の抵当権者、税金の差押え、共有名義、連帯保証人。関係する相手が増えるほど、確認と承諾に時間がかかります。
物件そのものの事情
立地、築年数、面積、周辺の売出状況。任意売却かどうかに関わらず売りにくい物件もあります。
そもそも、あなたに情報が届いていないだけ
実は活動しているのに、報告がないので止まって見える。これも少なくありません。
**原因によって、必要な対応がまったく違います。**だから最初にすべきは、会社を変えるかどうかの判断ではなく、原因を特定することです。
今の担当者に確認する5つの質問
そのまま口に出して使える形で書きます。メモを取りながら聞いてください。
質問1 現在の売出価格は、なぜこの価格なのですか
聞きたいのは査定額ではありません。今この価格である理由です。
確認したい中身は、周辺の成約事例と比べてどうか、債権者の意向がどう反映されているか、そして期日までに売り切れる価格になっているかです。
任意売却では、高く売ることと、期限内に売り切ることの両方が必要です。高い価格を維持したまま時間だけが過ぎれば、結果として競売になり、多くの場合はもっと低い金額で処分されます。
「相場から出しました」だけの答えなら、残り時間を計算に入れていない可能性があります。
質問2 これまで、どのような販売活動をしてきたのですか
活動の中身を、具体的に聞いてください。
- どのポータルサイトに、いつから掲載しているか
- チラシや広告をどこに出したか
- 業者間の流通ネットワークに情報を出しているか
- 問い合わせは何件あったか
- 内覧は何件あり、見た人の反応はどうだったか
**問い合わせ件数と内覧件数は、必ず数字で聞いてください。**ここが分かると原因が見えます。
問い合わせが少ないなら、価格か見せ方の問題です。内覧はあるのに決まらないなら、物件の状態や条件の問題かもしれません。数字が出てこない会社は、活動そのものを管理できていない可能性があります。
質問3 債権者とは、現在どこまで話が進んでいるのですか
任意売却は、**売却活動と債権者との交渉が同時に進みます。**片方だけでは完了しません。
- 債権者に、直近でいつ、何を報告したか
- 販売状況をどう伝えているか
- 価格の変更について、どんな話になっているか
- 買主が決まった場合、承諾までにどれくらいかかると聞いているか
任意売却では、売却代金の配分(何にいくら充てるか)を債権者等に確認してもらう必要があります。関係者が複数いる場合は、その調整も要ります。この部分が動いていないと、買主が見つかっても間に合わないことがあります。
質問4 期日から逆算して、いつまでに何をしなければならないのですか
これが一番大切な質問です。
競売の手続きが始まっている場合、任意売却には期限があります。しかも、買主が見つかってから決済までには、売買契約、債権者の承諾、抵当権や差押えの抹消書類の準備、代金の決済といった手順が必要で、それぞれに日数がかかります。
つまり、実際に買主を見つけなければならない時期は、期日そのものよりかなり手前です。
聞いてほしいのは、**「いつまでに買主を決める必要があるか」**という一点です。
**「まだ大丈夫です」という答えは、答えになっていません。**何月何日までに何が終わっていなければならないのか。ここを説明できる担当者は、逆算して動いています。
質問5 このまま売れなかった場合、次に何をする予定ですか
計画があるかどうかを見る質問です。
- 価格を変更するのか。するなら、いつ、いくらにするのか
- 販売方法を変えるのか
- 債権者と再交渉するのか
- どの時点で、次の手に切り替えるのか
**「もう少し様子を見ましょう」だけの答えなら、次の手が用意されていない可能性があります。**任意売却は待っていて状況が良くなるものではありません。時間が減っていく一方の手続きです。
会社を変えなくてもいいケース
5つの質問に、次のように答えが返ってきた場合は、無理に変える必要はありません。
- 価格の根拠を、市場と期日の両面から説明できる
- 販売活動の内容と、問い合わせ・内覧の数字を出せる
- 債権者と直近でどんなやり取りをしているか説明できる
- 期日から逆算した具体的な日付を言える
- 売れなかった場合の次の手と、切り替える時期を持っている
すべてに完璧な答えが返らなくても構いません。「そこは確認して折り返します」と言って、実際に折り返してくる担当者であれば、その方は仕事をしています。
任意売却で依頼先を変えれば、経緯の引き継ぎ、債権者への届け出、媒介契約の締結し直しなど、手続きに時間がかかります。残り時間が短いときほど、この時間の損失は大きくなります。
変えないという判断も、立派な判断です。
セカンドオピニオンを考えたほうがいいケース
一方で、次のような状態であれば、一度別の専門家の意見を聞くことをおすすめします。
- 期日が近いのに、今後の予定が説明されない
- 売出価格の根拠を聞いても、はっきりした答えがない
- 問い合わせ件数や内覧件数を教えてもらえない
- 債権者とどこまで話が進んでいるか分からない
- 期日から逆算した計画がない
- 連絡しても折り返しがない、または連絡が取れない
- 質問すると、不機嫌になる・はぐらかされる
特に**「期日から逆算した計画がない」**は重く見てください。**任意売却は、残り時間の管理そのものが仕事です。**それがない場合、活動しているように見えても間に合わない可能性があります。
**セカンドオピニオンは、会社を変えることとは違います。**今の進め方が適切かどうかを、第三者の目で確認するだけです。その結果「今の会社のままで問題ありません」となることも、当然あります。
期日が近い場合に、特に確認すること
裁判所から書類が届いている方は、手元の書類を用意してから電話してください。
1.今、手続きのどの段階にいるか
競売開始決定通知が届いた段階なのか、現況調査が終わった段階なのか、期間入札の通知まで来ているのか。段階によって残り時間がまったく違います。
2.書類に書かれている日付を、担当者と一緒に確認したか
事件番号、裁判所名、記載されている期日。この日付を共有していない担当者は、逆算ができません。
3.その日付から逆算して、今週やることは何か
「今月」ではなく「今週」で聞いてください。答えられるかどうかで、計画の有無が分かります。
なお、買受けの申出があった後に競売の申立てを取り下げるには、買受人等の同意が必要です(民事執行法76条1項)。**開札が終わると、状況は大きく変わります。**ご自身で「まだ何ヶ月かある」と判断せず、手元の書類をもとに確認してください。
依頼先を変更する前の注意点
セカンドオピニオンの結果、依頼先を変える判断をされる場合は、次の点にご注意ください。
媒介契約の内容を確認する
専任媒介や専属専任媒介の場合、契約期間や解約の取り扱いが定められています。まず契約書を確認してください。
債権者への届け出が必要になる
任意売却では、仲介する会社について債権者に届け出をしている場合があります。変更するには、その手続きも必要です。黙って別の会社と進めることはできません。
引き継ぎに時間がかかる
物件資料、これまでの経緯、債権者とのやり取りの内容。引き継ぎが不十分だと、新しい会社は一からやり直すことになります。
残り時間を必ず計算する
変更にかかる時間を差し引いて、なお間に合うのか。ここを計算せずに変えると、変えたこと自体が命取りになります。
これらは、変更をためらわせるために書いているのではありません。変えるなら、その代償を分かったうえで変えてくださいということです。
私たちに決められないこと
正直に書いておきます。次のことは、私たちの一存では決められません。
- 任意売却に応じてもらえるかどうか(債権者等の判断です)
- 売り出しの価格(債権者等の意向が反映されます)
- 引越し費用を確保できるかどうか(債権者等との協議・承諾によります)
- 残った債務を分割で返せるかどうか、その金額(債権者等の判断です)
- 税金の差押えを解除してもらえるかどうか(役所の判断です)
- 競売の申立てが取り下げられるかどうか(債権者の判断です)
- 買主がいつ現れるか
そして、**裁判所の手続きがかなり進み、残された期間が短くなっている場合、必要な時間を確保できないことがあります。**そのときは、正直にそうお伝えします。
「うちなら売れます」「うちなら間に合います」とは申し上げません。
では、誰に相談すればいいのか
住宅ローンの問題は、不動産だけで終わりません。
残った債務、税金、法律、離婚、相続、次の住まい、そして今後の生活。これらが重なっています。
相談先にはそれぞれの専門があります。弁護士は法的整理を、税理士は税務を、司法書士は登記を、不動産会社は売却を検討します。どれも、その分野の正しい仕事です。
ただ、相談する側から見れば、問題は一つです。
「住宅ローンが払えなくなった。これから自分と家族の生活を、どう立て直すのか」
株式会社エルライフの考え方
私たちは不動産会社ですが、「不動産会社だから家を売る」というところから始めません。
このご相談では、それが特に大事だと思っています。
すでに他社に依頼されている方に、「うちに変えてください」と言うのは簡単です。しかし、今の会社できちんと進んでいるなら、そのまま進めたほうが早いのです。
最初に考えるのは、この方にとって最終的に何が一番いいのかです。
士業会は「提携先」ではありません
株式会社エルライフは、一般社団法人 士業会と連携しています。
ここには弁護士、司法書士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など、それぞれ違う専門分野を持つ人がいます。社員ではありません。案件を回すための紹介先でもありません。
一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考える、チーム・仲間という関係です。
**進んでいない原因が、不動産の外にあることもあります。**税金の差押えの調整、後順位の抵当権者との交渉、残債の整理。それぞれ、必要な専門分野が違います。
自己破産について
**「自己破産しないほうがいい」とは申し上げません。必要なケースは実際にあります。**そして、その判断をするのは弁護士です。
お伝えしたいのは順番です。まず、不動産を整理した場合に実際にいくら債務が残るのかを確認する。そのうえで、必要な法的整理を弁護士と検討する。
**売却ありき、自己破産ありきで結論を決めない。**これが私たちの考え方です。
よくある相談場面
実際の事例ではなく、一般的に起こり得るケースとしてご紹介します。
ケース1:報告がなかっただけだった
数ヶ月連絡がなく不安になり、確認したところ、実際には販売活動が続いており、価格変更の相談も債権者と進んでいた。報告がなかっただけで、進め方に問題はなかった、というケースです。
ケース2:価格が動いていなかった
問い合わせ件数を聞いたところ、ほとんどないことが分かった。当初の価格のまま数ヶ月が過ぎており、期日から逆算すると値下げの判断が遅れていた、というケースです。この場合、会社を変えるより先に、価格の見直しを急ぐ話になります。
ケース3:逆算ができていなかった
期間入札の通知が届いているのに、担当者が具体的な日付を把握していなかった。残り時間の計算ができておらず、間に合わない可能性が高いことが分かった、というケースです。
専門家コメント 宅地建物取引士 松本
任意売却では、**会社を変えること自体が目的ではありません。**残された時間の中で、売却を成立させられる計画になっているかどうかを確認することが重要です。
私たちのところにも、他社に依頼中の方からご相談をいただくことがあります。そのとき最初にお伝えするのは**「まず、今の担当者にこれを聞いてみてください」**ということです。聞いた結果、きちんと答えが返ってくるのなら、**そのまま進めた方が早い。**乗り換えを勧めることが仕事だとは思っていません。
ただ、**期日から逆算した日付を誰も持っていない状態は危険です。**任意売却は、売る仕事であると同時に、時間を管理する仕事です。買主が見つかってからも、債権者の承諾や書類の準備に日数がかかります。逆算していなければ、間に合いません。
もう一つ申し上げたいのは、売れていないことと、担当者が悪いことは、必ずしも同じではないということです。価格が動かせない事情、関係者が多い事情、物件そのものの事情もあります。担当者を責めても解決しません。
大事なのは、あなたが今の状況を把握しているかどうかです。**どこの会社に頼んでいるかよりも、誰があなたの残り時間を一緒に管理してくれているのか。**そこを確認してください。
よくあるご質問
Q1. 任意売却の途中で、不動産会社を変えることはできますか。
できる場合があります。ただし媒介契約の内容の確認と、債権者への届け出が必要になります。手続きに時間がかかるため、残り時間を計算したうえで判断してください。
Q2. 数ヶ月売れていません。もう手遅れですか。
状況によります。手続きがどの段階にあるか、債権者の方針がどうかによって、残された時間は変わります。まず手元の書類で今の段階を確認してください。
Q3. 担当者に質問すると、気を悪くされないでしょうか。
**売主が販売状況を確認するのは当然のことです。**むしろ、状況を共有しながら進めるほうが、任意売却はうまくいきやすくなります。
Q4. セカンドオピニオンを受けたら、今の会社に知られますか。
ご相談の内容を、こちらから今の依頼先に伝えることはありません。ご相談されただけで、今の契約が変わることもありません。
Q5. 相談したら、御社に変更するよう勧められますか。
いいえ。確認の結果、今の進め方に問題がなければ、そのまま進めることをおすすめします。
Q6. 何を持っていけばいいですか。
裁判所や金融機関から届いた書類、媒介契約書、これまでの報告書などがあると助かります。あるものだけで構いません。
まとめ
- 進んでいないと感じても、すぐに会社を変える必要はない
- まず今の担当者に5つを確認する(価格の根拠/販売活動と数字/債権者との進捗/期日からの逆算/次の手)
- 答えが返ってきて納得できるなら、変えない判断でよい
- 特に**「期日から逆算した計画」**がない場合は要注意
- **変更には手続きと時間がかかる。**残り時間を計算してから判断する
- 開札が終わると、取下げには買受人等の同意が必要になる(民事執行法76条1項)
- 任意売却の結果は、物件や債権者の事情によって変わる。すべての案件が同じように進むわけではありません
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