自営業・個人事業主の住宅ローン 売上が落ちて返済が苦しいとき

目次

結論

自営業・個人事業主の方が住宅ローンで困っている場合、会社員の方とは確認することが少し違います。

理由は、住宅ローンだけでなく、

事業の借入・個人保証・自宅の担保・税金や社会保険料

まで一緒に絡んでいることがあるからです。

特に確認していただきたいのは、

事業の借入について、経営者保証や個人保証をしていないか

という点です。

そして、該当する方にぜひ知っていただきたいのが、

「経営者保証に関するガイドライン」

です。

これは、全国銀行協会と日本商工会議所が策定し、金融庁・中小企業庁も活用を推進している自主的なルールです。法的な強制力がある制度ではありませんが、金融機関には尊重・遵守することが期待されています。

条件が整えば、保証債務を整理する際に、

  • 破産時の自由財産99万円
  • 一定期間の生活費
  • 華美でない自宅

などを手元に残せる可能性があります。

さらに、返し切れない保証債務の残額は原則として免除され、ガイドラインに基づく債務整理に関する情報は信用情報登録機関に報告・登録されないとされています。

「会社が厳しい=自宅も失う」「法人が破産する=自分も破産する」

と決めつける前に、確認していただきたい仕組みです。

まず、自宅と事業の関係を確認してください

最初に確認するのは、自宅に何の抵当権が付いているかです。

法務局で登記事項証明書を取得し、権利部の乙区を確認してください。

住宅ローンの抵当権だけなのか。

それとも、事業資金の借入についても抵当権が設定されているのか。

ここで状況は大きく変わります。

次に、事業の借入について、ご自身が個人保証をしていないかを確認してください。

法人の代表者として会社の借入を保証している場合、会社が返済できなくなると、経営者個人に保証債務の履行を求められることがあります。

なお、経営者保証に関するガイドラインは法人経営者だけのものではなく、個人事業主も対象に含まれます。

【重要】経営者保証に関するガイドライン

このガイドラインは、

事業が厳しくなった経営者が、すべてを失わなければ再出発できない

という状態を避けることも目的の一つとしています。

中小企業庁は、ガイドラインに基づく保証債務整理について、金融機関が次のような対応を検討すると説明しています。

一定期間の生活費を残せる可能性

破産時の自由財産99万円に加え、早期に事業再生や廃業へ着手したことで金融機関の回収見込額が増える場合には、年齢などに応じておよそ100万円〜360万円程度の生活費相当額を残すことが検討されます。

「華美でない自宅」を残せる可能性

金融機関は、華美でない自宅について、経営者の収入に見合った分割弁済などによって住み続けられる方法を検討するとされています。

ただし、

「自宅を残せる制度」ではありません。

自宅の価値、担保の状況、債権者、回収見込みなどを踏まえて判断されるため、残せない場合もあります。

残った保証債務は原則として免除

保証履行時点の資産で返済し切れない保証債務については、原則として免除するという考え方が示されています。

信用情報に登録されない

これも大きな特徴です。

ガイドラインに基づいて保証債務整理を行った事実や、それに関連する情報は、信用情報登録機関に報告・登録されないと中小企業庁が明記しています。

つまり、通常の個人破産とは異なる形で、再出発できる可能性があるということです。

法人が破産しても、個人破産しかないとは限りません

金融庁も公式資料で、

法人が破産しても、経営者保証に関するガイドラインを活用して保証債務を整理することで、経営者個人の破産を回避できる可能性がある

と説明しています。

これは非常に大事です。

「会社を閉じるなら、自分も自己破産するしかない」

と最初から決めないでください。

ただし、対象となる債権者の同意が必要です。ガイドラインは裁判所が強制する手続きではありません。

【重要】自宅を先に売らないでください

事業の借入や経営者保証がある方は、不動産会社に売却を依頼する前に、ガイドラインを使える可能性がないか確認してください。

なぜなら、

先に自宅を処分してしまえば、「自宅を残す」という選択肢そのものがなくなるからです。

ガイドラインで残存資産を検討してもらえる可能性があるなら、順番が重要です。

不動産会社として売却できるかどうかより先に、

売るべきなのか

を確認しなければなりません。

早めの相談が大事な理由

金融庁・中小企業庁は、早期の事業再生や廃業着手について、資産の減少や劣化を防ぎ、金融機関の回収見込みを高めることで、経営者の手元に残せる資産が増える可能性があると説明しています。

つまり、

限界まで粘れば粘るほど有利になるわけではありません。

むしろ、売掛金が回収できなくなる、在庫や設備の価値が落ちる、不動産を急いで処分しなければならなくなる。

そうなる前に相談することが、結果として自宅や生活を守ることにつながる可能性があります。

どこに相談するのか

中小企業庁は、経営者保証に関する相談先として、取引金融機関、中小企業活性化協議会、商工会・商工会議所などを案内しています。保証債務整理については、中小企業活性化協議会が相談窓口の一つです。

さらに、

  • 弁護士
  • 税理士
  • 金融機関
  • 不動産会社

それぞれの視点が必要になることがあります。

不動産会社ができるのは、

自宅が現在いくらの価値なのか

を調べることです。

しかし、その数字を使ってガイドラインを利用すべきか、自宅を残せるか、事業を再生するか廃業するかを決めるのは、不動産会社の仕事ではありません。

株式会社エルライフの考え方

私たちは不動産会社ですが、

「家を売れば解決する」

とは考えていません。

自営業・経営者の方の場合、特にそうです。

売ってしまった後に、

「実は自宅を残せる可能性があった」

と分かっても、元には戻せません。

だから、事業債務や個人保証がある方には、

まず専門家に確認してください

と申し上げます。

売らないほうがいいなら、売らない。

残せる可能性があるなら、先にその可能性を調べる。

そのうえで、売却が必要だと分かってから不動産を動かす。

この順番を守ることが大切だと思っています。

士業会は「提携先」ではありません

株式会社エルライフは、一般社団法人 士業会と連携しています。

弁護士、司法書士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など、異なる専門分野を持つ人がいます。

社員でも、単なる紹介先でもありません。

一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考えるチーム・仲間です。

自営業の方の場合、

事業の数字は税理士。

保証債務や法的整理は弁護士。

登記は司法書士。

不動産の価値と売却は私たち。

しかも、この問題には順番があります。

だから、一つの問題として一緒に考える必要があると思っています。

専門家コメント 宅地建物取引士 松本

自営業・経営者の方のご相談で、最初に確認するのは、

「自宅に何の抵当権が付いていますか」

ということです。

住宅ローンだけなのか。

事業の借入も付いているのか。

ここで進め方がまったく変わります。

そして、事業の借入について個人保証をされている方には、

「経営者保証に関するガイドラインをご存じですか」

とお聞きします。

ほとんどの方がご存じありません。

条件が合えば、一定の生活費や、華美でない自宅を残せる可能性があります。

残りの保証債務も原則として免除され、ガイドラインによる債務整理の情報は信用情報登録機関に報告・登録されないとされています。

これを知らずに先に家を売ってしまうのは、もったいないことです。

だから私は、

「事業の借金があるなら、まだ家を動かさないでください」

と申し上げます。

不動産会社としては変な話かもしれません。

でも、売却して仲介手数料をいただくことより、その方に残せるものを残すほうが大事だと思っています。

そして、経営者の方にもう一つお願いがあります。

ぎりぎりまで一人で持ちこたえないでください。

国の資料も、早めの相談や早期着手が、再出発に有利になる可能性を示しています。

相談することは、廃業を決めることではありません。

売却を決めることでもありません。

選択肢を確認することです。

大事なのは、どこの会社に相談するかだけではありません。

誰を、自分の味方につけるのか。

事業だけでも、家だけでもなく、これからの生活全体を一緒に考えてくれる人を探してください。

よくあるご質問

Q1. 事業の借入で自宅を担保に入れています。どうすればいいですか。

まず登記事項証明書で状況を確認してください。

そして、不動産を動かす前に専門家に相談することが大切です。

順番を間違えると、選択肢が減る可能性があります。

Q2. 経営者保証に関するガイドラインとは何ですか。

経営者保証について一定のルールを定めたガイドラインです。

条件が整えば、保証債務を整理する際に、一定の生活費や「華美でない自宅」などを残せる可能性があります。

Q3. 必ず自宅を残せますか。

いいえ。

自宅の価値や担保の状況などによって異なり、金融機関との協議も必要です。

「残せる可能性がある」という仕組みです。

Q4. ガイドラインで保証債務を整理すると信用情報に登録されますか。

ガイドラインに基づく保証債務整理に関する情報は、信用情報登録機関に報告・登録されないとされています。

Q5. どこに相談すればいいですか。

取引金融機関、中小企業活性化協議会などの相談先があります。

また、内容によって弁護士・税理士などの専門家への相談が必要になります。

Q6. まだ事業を続けたいのですが、相談してもいいですか。

はい。

相談することは、廃業を決めることではありません。

事業を続ける方法も含めて、早い段階で選択肢を確認することが大切です。

まとめ

  • 自営業・個人事業主の方は、住宅ローンと事業の債務を一緒に確認する
  • まず登記事項証明書で、自宅に何の抵当権が付いているかを見る
  • 事業の借入について個人保証をしていないか確認する
  • 経営者保証に関するガイドラインという仕組みがある
  • 条件によっては、一定の生活費や**「華美でない自宅」**を残せる可能性がある
  • 残った保証債務は原則として免除される
  • ガイドラインに基づく保証債務整理の情報は、信用情報登録機関に報告・登録されない
  • 事業の債務がある方は、自宅を売る前に専門家へ確認する
  • ぎりぎりまで一人で抱えず、早い段階で選択肢を確認する

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