税金を滞納して差押えを受けた家は、売れるのか

目次

結論

税金の滞納による差押えが入っている家でも、売却できる場合があります。

ただし、通常の不動産売買として買主へ引き渡すには、差押えを解除・抹消できるよう、徴収を担当する行政機関等との調整が必要になるのが一般的です。

そして最初に、はっきりお伝えしておきます。

差押えを解除するかどうかを、不動産会社が決めることはできません。

判断するのは、税務署、市区町村など、その税金を徴収している機関です。

一方で、国税については国税徴収法第48条に「超過差押え及び無益な差押えの禁止」が定められています。

簡単に言えば、差し押さえて換価しても、滞納処分費や優先する債権を差し引いた結果、国税へ配当される見込みがない財産を差し押さえることには制限があるという考え方です。

さらに、差押え後にそのような状態になった場合の解除についても規定されています。

ただし、

法律に規定があることと、あなたの不動産について実際に解除されることは別です。

ここを分けて考えることが非常に大切です。


「差押」と書いてあったら、もう家は売れないのか

登記事項証明書に、

「差押」

と書かれている。

あるいは、市役所や税務署などから差押通知が届いた。

それを見ると、

「もう家は売れない」

と思われる方が多くいらっしゃいます。

しかし、そこで全部終わったと決める必要はありません。

差押えが入った状態では、その差押えの効力が残っていますので、買主にとって大きな問題になります。

通常の売買では、買主は、

抵当権や差押えなどを整理した状態で所有権を取得したい

と考えます。

そのため実務上は、売却の決済時までに、

住宅ローンの抵当権

と、

税金等の差押え

をどう外すのかについて、関係者との調整が必要です。

つまり、

差押えがある=絶対に売れない

ではなく、

差押えをどう整理するのかが問題になる

ということです。


そもそも、税金の差押えとは何が起きている状態か

税金を滞納し、督促等を受けても納付されない場合、法令に基づいて財産の差押えが行われることがあります。

対象になる財産は、

預貯金。

給与。

不動産。

その他の財産。

などさまざまです。

不動産が差し押さえられた場合には、通常、登記簿にその内容が記載されます。

登記事項証明書を取得すると、

権利部(甲区)

に差押えの記載があることがあります。

そこを見ると、

誰が差し押さえているのか。

いつ差押えが入ったのか。

などを確認できます。

まずは、

自分の家に何が登記されているのか

を正確に確認することがスタートです。


【重要】税金と住宅ローンは、どちらが先なのか

ここは非常に重要で、同時に簡単に断定してはいけない部分です。

不動産には住宅ローンの抵当権が設定されていることが多く、その後に税金の差押えが入っているケースがあります。

すると、

「住宅ローンの抵当権のほうが先に登記されているから、銀行が必ず先ですよね」

と思われるかもしれません。

しかし、税金と担保権の優先関係は、単純に登記簿の記載順だけで決まるわけではありません。

国税では、税の法定納期限等と抵当権設定の時期などが優先関係の判断に関係します。

地方税の場合も、それぞれ法令上の優先関係があります。

さらに、

抵当権の設定時期。

税の種類。

法定納期限。

差押えの時期。

他の担保権。

などによって判断が変わります。

ですから、

登記簿の1番・2番だけを見て、自分で配当順位を決めないでください。

ここは必要に応じて、税理士、弁護士、司法書士などの専門家と確認する部分です。


国税徴収法第48条とは

国税について知っておいていただきたいのが、国税徴収法第48条です。

ここには、

「超過差押え及び無益な差押えの禁止」

という考え方が定められています。

大きく分けると二つです。

超過差押え

税金を回収するために必要な範囲を明らかに超えて財産を差し押さえることには制限があります。

無益な差押え

財産を差し押さえて換価しても、

滞納処分費。

その国税より優先する債権。

などを差し引くと、国税へ配当される見込みがない場合には、その差押えに制限があります。

また、差押え後にそのような状態になった場合について、解除に関する規定もあります。

これは非常に重要な法律上の考え方です。


だからといって、「第48条があるから外せます」ではありません

ここは強くお伝えします。

国税徴収法第48条がある=差押えを必ず外してもらえる

ではありません。

実際には、

その不動産はいくらの価値があるのか。

住宅ローンはいくら残っているのか。

他に優先する債権はいくらあるのか。

税金はいくら滞納しているのか。

実際の売却価格はいくらなのか。

売却に必要な費用はいくらなのか。

などを確認しなければなりません。

そして、法律の適用や差押解除について判断するのは徴収機関です。

私たちが、

「第48条があるので外してください」

と言えば、それだけで解除されるというものではありません。

だから、

「税金の差押えは必ず外せます」

と最初から言い切る説明には注意してください。

私たちも、そうは申し上げません。


地方税の場合はどうなるのか

固定資産税、住民税、自動車税などの地方税については、国税徴収法第48条をそのまま適用する、という書き方は正確ではありません。

地方税については地方税法など、それぞれの制度に基づいて徴収や差押えが行われます。

ただし実務上、

差押えを維持したままでは売却が成立しにくい

という問題は同じです。

そのため、市役所・府税事務所などの徴収担当部署と、

現在の滞納額。

不動産価格。

住宅ローン残高。

売却した場合の配分。

などを示しながら協議することになります。

つまり、

国税なのか。地方税なのか。社会保険料なのか。

最初に相手を確認する必要があります。


実務では、どうやって差押解除を協議するのか

差押えがある案件で、最初に役所へ、

「外してください」

とお願いしても、判断する材料がありません。

まず数字を揃えます。

一般的には、

  1. 不動産の売却見込額を確認する
  2. 住宅ローン等の残高を確認する
  3. 滞納税額を確認する
  4. その他の抵当権・差押えを確認する
  5. 売却に必要な費用を確認する
  6. 売却代金をどのように配分できるか検討する
  7. 資料を持って徴収担当部署等と協議する

という流れになります。

場合によっては、

一定額を税金へ納付することを前提に解除を協議する

こともあります。

反対に、売却しても優先債権等への支払いで残らないことを資料で示し、その状態を踏まえて相談することもあります。

ただし、

いくら払えば必ず解除される

という一律の金額はありません。

ここも行政機関等との協議になります。


最初に必要なのは「交渉力」ではなく数字です

差押えが入っていると、

「役所と交渉できる会社を探さないと」

と思われるかもしれません。

しかし、最初に必要なのは交渉の言葉ではありません。

数字です。

確認するのは、

家はいくらで売れそうなのか。

住宅ローンはいくら残っているのか。

税金はいくら滞納しているのか。

他に抵当権や差押えはあるのか。

です。

この数字がなければ、

税金にいくら配分できるのか

も、

そもそも売却が成立するのか

も分かりません。

そして、

査定をすることと、家を売ることは別です。

数字を調べたからといって、売却しなければならないわけではありません。

まず判断材料を揃えます。


差押えは一つとは限りません

不動産の登記を確認すると、複数の差押えが入っている場合があります。

たとえば、

市税。

国税。

都道府県税。

社会保険料。

民間債権者による強制執行上の差押え。

などです。

さらに、

住宅ローンの第一抵当権。

第二抵当権。

事業融資の担保。

などが存在する場合もあります。

こうなると、

一人の相手とだけ話せばいい案件ではありません。

関係者が増えるほど、

確認。

資料作成。

協議。

承諾。

に時間が必要になります。

だからこそ、早い段階で登記簿全体を確認する必要があります。


自分で差押えを確認する方法

不動産の登記事項証明書を取得してください。

法務局などで取得できます。

主に見るのは、

権利部(甲区)

所有権に関する事項が記載されます。

差押えが入っている場合、ここに、

差押

と記載されることがあります。

誰による差押えなのかも確認します。

権利部(乙区)

抵当権など、所有権以外の権利が記載されます。

住宅ローンの抵当権などは、通常こちらで確認します。

甲区と乙区の両方を見て、

今、この不動産に何が付いているのか

を確認してください。


まだ差押え前なら、先に相談してください

まだ登記に差押えが入っていない。

しかし固定資産税や住民税などを滞納している。

この段階なら、徴収担当部署へ相談してください。

事情によっては、

分割納付。

徴収猶予。

換価の猶予。

その他の制度。

について相談できる場合があります。

利用できる制度や条件は税目・状況によって異なります。

大切なのは、

払えないから連絡しない

ではなく、

払えない状態だからこそ、現在利用できる制度があるか確認する

ということです。


自己破産すれば税金もなくなるのか

ここも大きな誤解があります。

住宅ローンやカードローンなどとは違い、租税等の請求権は、自己破産をしても免責されないのが原則です。

つまり、

自己破産をすれば税金も全部なくなる

とは考えないでください。

だから、住宅ローンと税金の両方を滞納している場合は、

不動産をどう整理するのか。

住宅ローン残債をどうするのか。

税金をどうするのか。

を分けて確認する必要があります。

法的整理が必要かどうかは弁護士へ相談し、税金については徴収機関や必要に応じて税理士などへ確認します。


私たちに決められないこと

正直に書いておきます。

次のことは、株式会社エルライフだけで決めることはできません。

  • 差押えを解除してもらえるかどうか
  • いくら納付すれば解除に応じてもらえるか
  • 任意売却に債権者等が応じるか
  • 任意売却での売却条件
  • 売却代金を誰へいくら配分するか
  • 引越し費用などを認めてもらえるか
  • 納税の猶予や分割に応じてもらえるか
  • 税金と他の債権の法的な優先順位

それぞれ、

徴収機関。

金融機関。

保証会社。

その他の債権者。

法律・税務の専門家。

などの判断が関係します。

だから、

「差押えは外せます」

とは最初から申し上げません。

外せる場合もあります。

外せない場合もあります。

まず数字を出し、関係者と確認します。


では、誰に相談すればいいのか

税金の差押えが入った家の問題は、不動産だけでは解決しにくいテーマです。

不動産会社は、

家がいくらで売れるのか。

どう売るのか。

を考えます。

税理士は税務を確認します。

司法書士は登記を扱います。

弁護士は法律問題や法的整理を検討します。

そして、差押解除について実際に判断するのは、税務署や自治体などの徴収機関です。

それぞれ役割が違います。

しかし、相談する側から見れば問題は一つです。

「住宅ローンも税金も払えなくなった。この先、自分と家族の生活をどう立て直すのか」

です。


株式会社エルライフの考え方

私たちは不動産会社ですが、

「差押えがあるから売りましょう」

というところから始めません。

まず、

家はいくらで売れるのか。

住宅ローンはいくら残っているのか。

税金はいくら滞納しているのか。

他に差押えはないのか。

売ったら住宅ローンはいくら残るのか。

税金へ配分できる可能性はあるのか。

次にどこへ住むのか。

そして、

売った後の生活が成り立つのか。

そこまで確認します。

最初に答えを決めるのではなく、数字から現実的な方法を探します。


士業会は「提携先」ではありません

株式会社エルライフは、一般社団法人 士業会と連携しています。

弁護士、司法書士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など、それぞれ違う専門分野を持つ人たちがいます。

社員ではありません。

単に案件を紹介するためだけの関係でもありません。

一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考える、チーム・仲間という関係です。

差押えの案件は、特にこの形が必要になる場合があります。

不動産価格は不動産。

税金は税務。

登記は司法書士。

法的整理は弁護士。

一人の相談者が、それぞれ別の場所へ行き、最初から何度も説明するのは大きな負担です。

だから、必要な専門家が必要な場面で加わる形を大切にしています。


自己破産について

「自己破産しないほうがいい」

とは申し上げません。

必要なケースはあります。

その判断は弁護士が行います。

ただし、税金については、

自己破産をすればすべて免責される

というものではありません。

住宅ローンの残債。

その他の借入れ。

税金。

それぞれ扱いが違います。

だからこそ、

売却ありき。
自己破産ありき。
リースバックありき。

最初から一つの方法に決めない。

数字と契約、法律関係を確認したうえで考えます。


よくある相談場面

※以下は特定のお客様の実例ではなく、一般的に起こり得るケースです。

ケース1 差押えが入った時点で売れないと思っていた

登記事項証明書に「差押」と書かれているのを見て、

「もう売却は不可能だ」

と思い込んでいた。

まず住宅ローン残高、税金滞納額、売却見込額などを整理し、解除について協議できる可能性があるか確認するところから始めたというケースです。

ケース2 複数の差押えが見つかった

本人は市税だけだと思っていた。

登記を確認すると、別の差押えも入っていた。

それぞれ別の相手との調整が必要なため、当初考えていたより時間が必要だと分かったというケースです。

ケース3 協議しても条件がまとまらなかった

売却見込額、住宅ローン残高、税金などを整理して協議した。

しかし、関係者の条件が一致しなかった。

その場合には、任意売却や差押解除が成立しないこともあります。

できない場合は、その事実も正直にお伝えします。


専門家コメント 宅地建物取引士 松本

登記簿に、

「差押」

と書かれているのを見て、

「もう終わりですよね」

と聞かれることがあります。

私は、

「まず数字を見ましょう」

とお伝えします。

差押えが入っていることは、確かに大きな問題です。

でも、

差押えが入った。

だから売れない。

だから競売しかない。

と、そこまで一気に結論を決める必要はありません。

国税については、法律に無益な差押えなどを禁止する考え方もあります。

ただし、ここは誤解しないでください。

法律に条文があることと、あなたの家の差押えが解除されることは別です。

判断するのは税務署などの徴収機関です。

地方税なら、市区町村などそれぞれの徴収担当部署です。

私たちができるのは、

家はいくらで売れるのか。

住宅ローンはいくら残っているのか。

税金はいくらなのか。

その他の債権はいくらなのか。

まず数字を揃えることです。

数字がなければ、相談も協議も始まりません。

そして、役所の担当者を敵だと思わないでください。

担当者にも、法律と手続きに基づいて仕事をする立場があります。

だからこそ、

感情ではなく、資料と数字を持って話をする。

これが大切です。

差押えの問題は、不動産だけでは解決できないことがあります。

税金。

登記。

法律。

住宅ローン。

全部つながっています。

だから大事なのは、

どこの会社に相談するかだけではなく、誰を自分の味方につけるのか。

一つの問題を、必要な専門家と一緒に見てくれる相手を選んでください。


よくあるご質問

Q1.差押えが入った家は、絶対に売れませんか?

絶対に売れないわけではありません。

通常の売買として進めるには、差押えの解除・抹消について徴収機関等との調整が必要になる場合があります。

実際に解除されるかどうかは、状況と徴収機関等の判断によります。


Q2.国税徴収法に差押えを解除する規定はありますか?

国税徴収法第48条には、超過差押え及び無益な差押えの禁止が定められており、差押え後に一定の状態になった場合の解除についても規定があります。

ただし、個別案件でその規定が適用されるかを不動産会社が決めることはできません。


Q3.住宅ローンの抵当権が先に登記されていれば、必ず銀行が税金より先ですか?

必ずとは言えません。

税金と抵当権の優先関係は、登記順だけではなく、税の法定納期限や抵当権設定時期など複数の事情によって判断されます。

個別に確認してください。


Q4.固定資産税や住民税にも国税徴収法第48条がそのまま適用されますか?

国税徴収法第48条は国税に関する規定です。

地方税は地方税法などに基づいて扱われます。

国税と地方税を同じ条文だけで判断しないことが大切です。


Q5.差押えが複数あります。売れますか?

可能性はありますが、関係者が増えるほど調整が複雑になり、時間も必要になります。

まず登記簿と各債務の金額を確認してください。


Q6.まだ差押えはありませんが、税金を滞納しています。

徴収担当部署へ相談してください。

分割納付や猶予制度などを利用できる場合があります。

差押えが入る前のほうが、確認できる方法が多い場合があります。


Q7.自己破産すれば、滞納している税金もなくなりますか?

税金などの租税債権は、自己破産によって免責されないのが原則です。

法的整理を検討する場合は、税金を含めて弁護士等へ確認してください。


まとめ

  • 税金の差押えが入った家でも、売却できる場合がある
  • 通常の売却では、差押えの解除・抹消について徴収機関等との調整が必要になる
  • 国税については、**国税徴収法第48条に「超過差押え及び無益な差押えの禁止」**が定められている
  • ただし、法律の規定がある=必ず解除される、ではない
  • 判断するのは税務署や自治体などの徴収機関
  • 国税と地方税では根拠となる法令が異なる
  • 税と抵当権の優先関係は、登記順だけでは決まらない
  • 最初に確認するのは、売却見込額・住宅ローン残高・滞納税額・その他の抵当権や差押え
  • 差押えが複数あるほど、調整に時間が必要になる
  • 税金は、自己破産でも免責されないのが原則
  • 調べることと、家を売ることは別

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