結論
住宅ローンが払えないときの対処法は、いくつもあります。
ただし、どれが使えるかは、あなたが今どの段階にいるかで変わります。
大きく分けると、確認したいのは次の2つです。
- まだ滞納していないか、すでに滞納しているか
- 家を売った場合、住宅ローンを完済できるか、できないか
この2つの答えによって、選べる方法は大きく変わります。
インターネットでよく紹介されている「借り換え」や「返済条件の変更」は、滞納が始まる前のほうが検討しやすい方法です。
まず、自分が今どこにいるのかを確認してください。
この記事は、そのための記事です。
はじめに
「住宅ローンが払えない」と検索すると、さまざまな対処法が出てきます。
家計の見直し、借り換え、返済猶予、保険の確認、売却、任意売却、自己破産。
しかし、読んでも「では、自分はどれなのか」が分からなかった方も多いのではないでしょうか。
理由は単純です。
対処法の一覧は書いてあっても、そのうちどれが自分に使えるのかを判断する基準が分かりにくいからです。
さらに、住宅ローンの問題では、
家を売れば住宅ローンを完済できる人
と、
家を売っても住宅ローンが残る人
では、取れる方法がまったく違います。
売却額で住宅ローンを完済できるなら、通常の不動産売却で整理できる可能性があります。
しかし、本当に困っている方の中には、
「売っても住宅ローンが残る」
という方も少なくありません。
この記事では、その両方について整理します。
まず、2つの質問に答えてください
紙とペンは必要ありません。
頭の中で構いませんので、確認してみてください。
質問1 もう住宅ローンを滞納していますか
- まだ滞納していない
→ 段階A - 1〜2回、引き落としができていない
→ 段階B - 督促状や催告書が届いている
→ 段階C - 一括返済を求められた、または代位弁済の通知が届いた
→ 段階D
質問2 家を売ったら住宅ローンを完済できそうですか
- 完済できそう
→ アンダーローンの可能性 - 完済できない、または分からない
→ オーバーローンの可能性
「分からない」で構いません。
むしろ、ここが分からないまま悩んでいる方は多くいらっしゃいます。
そして、この数字を知ることが、実は最初にやるべきことの一つです。
段階A まだ滞納していない
この段階が、最も選択肢を残しやすい時期です。
1.家計の支出を見直す
まず確認したいのは固定費です。
保険料、通信費、自動車関連費、サブスクリプションなど、毎月継続して出ていく支出を確認します。
住宅ローンの返済そのものだけを見るのではなく、家計全体で毎月いくら不足しているのかを把握することが重要です。
2.借り換えを検討する
現在の借入条件によっては、借り換えにより月々の返済負担を軽減できる可能性があります。
ただし、借り換えには審査があり、登記費用や手数料などの諸費用もかかります。
そのため、
「月々いくら下がるのか」
だけではなく、
「諸費用を含めてもメリットがあるのか」
まで確認する必要があります。
また、延滞がある場合は審査上不利になる可能性があります。
3.返済条件の変更を金融機関に相談する
金融機関によっては、
- 一定期間の返済額を減らす
- 返済期間を延長する
- 返済方法を変更する
などの相談に応じてもらえる場合があります。
ただし、条件変更の内容や審査基準は金融機関・契約内容によって異なります。
変更後の金利や総返済額がどうなるのかまで確認してから判断してください。
4.団体信用生命保険の内容を確認する
病気や高度障害などが原因で返済が難しくなった場合、団体信用生命保険や付帯特約が利用できる可能性があります。
がん、脳卒中、急性心筋梗塞などの特約が付いている場合もあります。
まず契約書類を確認してください。
5.売却した場合の金額を調べる
ここは非常に重要です。
家の価格を調べることと、家を売ることは別です。
売却した場合に、
- 住宅ローンを完済できるのか
- いくら残るのか
を知るだけでも、次に取るべき行動が見えてきます。
この段階で避けたいこと
住宅ローンの返済資金を、カードローンやキャッシングなどの高金利の借入れで補い続けることです。
一時的に住宅ローンを支払えても、別の借金が増えれば、家計全体としてはさらに厳しくなる可能性があります。
段階B 1〜2回、引き落としができなかった
住宅ローンを滞納すると、契約内容に基づいて遅延損害金が発生する場合があります。
金融機関から電話や書面で連絡が来る時期でもあります。
この段階で考えられること
- 遅れている分を支払って正常な返済に戻せるか確認する
- 金融機関に返済条件変更について相談する
- 売却した場合の金額を確認する
- 今後の収支を整理する
借り換えについては、延滞の状況によって審査が厳しくなる可能性があります。
この段階で最も大切なこと
金融機関からの連絡を放置しないことです。
払えない状態で電話に出るのはつらいと思います。
しかし、連絡が取れない状態が続けば、金融機関側は契約に基づいて次の手続きを進めていきます。
「今すぐ全額は払えません」
という状況であっても、まず現在の状態を伝えることが大切です。
そして、この時期に家を売ったらいくらになるのかを確認しておいてください。
まだ時間があるうちに数字を持っているかどうかで、その後の判断が大きく変わります。
段階C 督促状や催告書が届いた
書面によって支払いを求められる段階です。
書類の名称や内容は金融機関によって異なりますが、滞納が続くと、より強い内容の通知が届くようになります。
また、長期間の延滞は信用情報に登録される可能性があります。
一般に「ブラックリストに載る」と表現されることがありますが、「ブラックリスト」という名前の名簿が存在するわけではありません。
信用情報機関に延滞などの情報が登録される、という意味です。
この段階で考える方法
返済条件の変更について相談できる場合もありますが、滞納前より選択肢は狭くなる可能性があります。
そして、ここから重要になるのが、
「家を売った場合に住宅ローンを完済できるか」
という確認です。
なぜ、ここが大きな分かれ道なのか
家を売って住宅ローンを完済できる方、つまりアンダーローンであれば、通常の不動産売却で整理できる可能性があります。
問題は、
家を売っても住宅ローンが残るオーバーローンの場合です。
住宅ローンを利用している不動産には、通常、金融機関などの抵当権が設定されています。
通常の売買では、決済時に住宅ローンを完済し、抵当権を抹消したうえで買主へ引き渡します。
しかし、売却代金だけでは住宅ローンを完済できない場合、そのままでは抵当権を抹消できません。
そこで検討される方法の一つが、
任意売却です。
任意売却とは、債権者などの承諾を得ながら、住宅ローンが残る不動産を売却する方法です。
ただし、
任意売却は債権者等の承諾が前提です。
不動産会社が「できます」と言えば成立するものではありません。
そして、債権者との協議、買主探し、差押えがある場合の調整などには時間が必要です。
だからこそ、この段階での相談が重要になります。
段階D 一括返済を求められた・代位弁済の通知が届いた
住宅ローンの滞納が続くと、分割で返済する権利である期限の利益を失い、残額全体について一括返済を求められることがあります。
さらに、保証会社が金融機関へ返済する「代位弁済」が行われると、その後の請求・交渉相手が銀行から保証会社などへ変わることがあります。
銀行へ相談しても話が進まないことがあるのは、担当者が冷たいからではありません。
すでに債権の扱いが次の段階へ移っている可能性があるからです。
この段階で検討すること
- 任意売却
- 債務整理などの法的整理
- その両方
この段階でも対応できる場合はあります。
ただし、競売手続きが進めば進むほど、使える時間は短くなります。
「もう間に合わない段階」とは何か
住宅ローンが残ったまま不動産を売却する場合、一般的には次のような作業が必要になります。
- 物件を調査する
- 売却可能価格を確認する
- 債権者等と売却について協議する
- 買主を探す
- 売却代金の配分を調整する
- 他の抵当権や税金等の差押えがあれば調整する
- 売買契約を締結する
- 抵当権などの抹消に必要な手続きを進める
- 決済・引き渡しを行う
この中には、不動産会社だけでは決められないことが数多くあります。
債権者、保証会社、自治体、他の債権者、買主など、複数の関係者との調整が必要になることがあります。
そのため、競売手続きが相当進み、残された期間が短い場合には、任意売却を成立させるために必要な時間が確保できないことがあります。
「競売になっても必ず間に合います」
とは言えません。
間に合う場合もあれば、間に合わない場合もあります。
私たちは、間に合わないと判断した場合には、そのことも正直にお伝えします。
なぜ「売った場合の数字」を先に知るべきなのか
ここまで何度も、
「家を売った場合の金額を確認してください」
と書きました。
理由があります。
住宅ローンが払えないという問題は、数字によって次のように分かれます。
売って住宅ローンを完済できる
→ 通常の売却で整理できる可能性があります。
売っても住宅ローンが残る
→ 任意売却など別の方法を検討する必要があります。
売却後にも大きな債務が残る
→ 今後の返済だけでなく、法的整理も含めて検討する場合があります。
つまり、
この数字が分からなければ、どの方向へ進むべきか判断できません。
そして、この数字は、
家を売ると決めなくても確認できます。
査定を取ることは、売却の契約をすることではありません。
では、誰に相談すればいいのか
住宅ローンが払えないという問題は、不動産だけの問題ではないことが多くあります。
住宅ローン。
不動産。
残った債務。
税金。
法律。
離婚。
相続。
次の住まい。
そして、その後の生活。
さまざまな問題が重なっています。
それぞれの専門家には役割があります。
- 弁護士は法律の専門家として法的整理を検討する
- 税理士は税務の専門家として税金の問題を検討する
- 司法書士は登記などの専門分野を扱う
- 不動産会社は不動産の価格や売却方法を検討する
どれも重要な仕事です。
ただ、相談する方から見れば問題は一つです。
「住宅ローンが払えなくなった。これから自分と家族の生活をどう立て直すのか」
ここを中心に考える必要があります。
株式会社エルライフの考え方
私たちは不動産会社ですが、
「不動産会社だから家を売る」
というところから始めません。
最初に考えるのは、
この方にとって最終的に何が一番いいのか。
ということです。
まず、状況全体を整理します。
家をどうするのか。
売った場合、残債はいくらになるのか。
税金の問題はないか。
法的整理が必要なのか。
次の住まいはどうするのか。
その後の生活はどうするのか。
この順番で確認していくと、
家を売らないほうがいい場合もあります。
その場合は、そのようにお伝えします。
士業会は「提携先」ではありません
株式会社エルライフは、一般社団法人 士業会と連携しています。
弁護士、司法書士、税理士、行政書士、土地家屋調査士など、それぞれ違う専門分野を持つ人たちがいます。
社員ではありません。
単なる案件紹介のための提携先でもありません。
一人の相談者の問題を、必要に応じて違う角度から一緒に考えるチーム・仲間という関係です。
住宅ローンが払えないという相談では、不動産をどう整理するかだけでは終わりません。
残る債務をどうするのか。
税金はどうするのか。
次の住まいをどうするのか。
今後の生活をどう立て直すのか。
問題が複数あるのであれば、考える側も複数の専門分野から見る必要があると考えています。
自己破産について
住宅ローンの返済が難しくなると、
「自己破産しかないのではないか」
と考える方もいらっしゃいます。
私たちの考え方は、
最初から自己破産ありきで決めない
ということです。
これは、
「自己破産をしないほうがいい」
という意味ではありません。
自己破産が必要なケースはあります。
そして、自己破産などの法的整理について判断・手続きを行うのは弁護士などの専門家です。
私たちがお伝えしたいのは、
順番です。
まず、不動産を整理した場合に実際にいくら債務が残るのか。
今後の収入と生活はどうなるのか。
それを確認したうえで、必要な法的整理を専門家と検討する。
売却ありき。
自己破産ありき。
リースバックありき。
最初から一つの答えを決めてしまわない。
それが私たちの考え方です。
私たちに決められないこと
正直に書いておきます。
次のことは、私たちの一存では決められません。
- 任意売却に応じてもらえるか
- 売却条件
- 売却代金の配分
- 引越し費用などを売却代金から確保できるか
- 売却後の残債をどのように返済するか
- 買主がいつ見つかるか
これらは、債権者等との協議や買主の存在などによって変わります。
「大丈夫です。必ず何とかなります」
とは申し上げません。
できること。
できないこと。
相手の判断が必要なこと。
それを最初に整理したうえで、できる限りの交渉・調整を行います。
よくある相談場面
以下は、特定の実例ではなく、一般的に考えられるケースです。
ケース1 滞納前に相談し、売らない方向を検討できた
返済が苦しくなり相談。
家を売った場合の金額や家計を確認したところ、支出の整理や返済条件の見直しを検討できる状態だった。
「売却しない」という選択肢を残せる場合があります。
ケース2 売却後の残債を確認したことで判断材料が増えた
売っても多額の住宅ローンが残ると思っていた。
しかし、実際の売却可能価格を確認すると、想定していたより残債が少なくなる可能性が分かった。
数字が分かることで、次の判断が変わることがあります。
ケース3 カードローンで住宅ローンを補っていた
住宅ローンを支払うため、カードローンなどの借入れを続けていた。
相談時には住宅ローン以外の債務も膨らんでいた。
このような場合は、
不動産だけでなく、法律の専門家も含めて全体を見る必要があります。
専門家コメント 宅地建物取引士 松本
住宅ローンが払えないというご相談で、私が最初に伺うのは、
「今、どの段階ですか」
ということと、
「家を売ったらいくらになるか、ご存じですか」
という2点です。
この2つが分かると、話がとても具体的になります。
逆に、この2つが分からないまま悩んでいる時間が、一番つらいのではないかと思います。
分からないものは、実際より大きく見えるからです。
数字を知ることは、売る決断をすることではありません。
判断するための材料を手に入れるだけです。
調べた結果、
「売らない」
という結論になる方がいてもいい。
それでいいのです。
もう一つ。
銀行の担当者を敵だと思わないでください。
銀行や保証会社の担当者にも、組織の中で守るべき立場があります。
だから私が大切だと思うのは、
どこの会社に相談するかだけではなく、誰を自分の味方につけるのか。
ということです。
あなたの立場で、不動産だけではなく、その後の生活まで一緒に考えてくれる人がいるかどうか。
それが、この問題では大きな違いになると思っています。
よくあるご質問
Q1.まだ滞納していませんが、相談してもいいですか?
はい。
むしろ滞納前のほうが、検討できる方法を多く残せる可能性があります。
Q2.家を売らずに解決する方法はありますか?
状況によります。
家計の見直しや返済条件の変更などで対応できる場合もあります。
まずは、現在の状況と数字を確認することから始めてください。
Q3.家を売っても住宅ローンが残る場合、売れないのですか?
通常の売却では難しい場合がありますが、任意売却という方法を検討できるケースがあります。
ただし、債権者等の承諾が必要です。
Q4.銀行に相談すると、すぐ競売になりますか?
相談しただけで直ちに競売になるというものではありません。
むしろ、金融機関からの連絡を長期間放置することは避けたほうがよいでしょう。
返済条件の変更などについては、現在の契約条件や変更後の条件を確認したうえで判断してください。
Q5.相談すると、必ず家を売ることになりますか?
いいえ。
売却が最善でないと判断する場合もあります。
Q6.家族に知られずに相談できますか?
ご相談の段階では、まず現在の事情をお聞きすることができます。
ただし、その後の手続き内容や名義関係によっては、関係者の同意や協力が必要になる場合があります。
まとめ
- 住宅ローンが払えないときは、まず滞納の有無を確認する
- 次に、家を売った場合に住宅ローンを完済できるかを確認する
- 借り換えや返済条件変更は、滞納前のほうが検討しやすい
- 売っても住宅ローンが残る場合は、任意売却を検討できる場合がある
- 任意売却には、債権者等の承諾と一定の時間が必要
- 競売手続きが進むほど、使える時間は少なくなる
- 調べることと、売ることは別
- 不動産だけでなく、債務・税金・法律・次の住まい・生活まで含めて考える
- 一つの方法ありきで結論を決めない
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