結論
「任意売却はできません」
そう言われたとしても、その言葉だけで諦める必要はありません。
大切なのは、
「なぜ、できないのですか」
という理由を確認することです。
任意売却が難しい理由には、大きく分けると、
- 仕組み上、本当に難しい
- 債権者の承諾が得られていない
- 売却価格と残債・費用の調整ができていない
- 競売までの時間が足りない
- 現在の進め方では難しい
などがあります。
理由が違えば、確認すべきことも違います。
もちろん、確認した結果、本当に任意売却が難しいという結論になる場合もあります。
しかし、「できない」と言われた理由が分からないまま諦めるのと、理由を一つずつ確認したうえで判断するのとでは、大きく違います。
この記事では、諦める前に確認してほしい5つのことをお伝えします。
まず「誰に、なぜできないと言われたのか」を整理してください
同じ「できない」という言葉でも、意味は同じではありません。
例えば、
金融機関から言われたのか。
保証会社から言われたのか。
債権回収会社(サービサー)から言われたのか。
役所から言われたのか。
不動産会社から言われたのか。
これによって話は変わります。
また、
「任意売却そのものができない」
のか、
「今提示している価格では承諾できない」
のか、
「この条件では差押えを解除できない」
のか、
「残された期間では難しい」
のかでも、意味はまったく違います。
ですから、最初に確認してほしいのは、
「何が理由で、できないのですか」
という一点です。
ここが分からなければ、次の方法を考えることもできません。
「任意売却はできない」と言われたときに確認したい5つのこと
1.債権者が任意売却そのものを認めていないのか
任意売却は、住宅の所有者と不動産会社だけで決められるものではありません。
住宅ローンが残っていて、売却代金だけでは完済できない場合、通常は抵当権を抹消してもらうために債権者との調整が必要です。
そのため、
「売主が売りたい」
「買主が買いたい」
だけでは成立しない場合があります。
ここで確認してほしいのは、
債権者が任意売却そのものを認めていないのか、それとも現在提示している条件を認めていないのか
です。
この2つは違います。
現在の売出価格や配分条件では承諾できない、という意味であれば、条件を見直して再度相談できる場合があります。
一方で、債権者の方針や案件の状況によって、任意売却による処理が難しい場合もあります。
まず、この違いを確認してください。
2.売出価格に問題がないか
任意売却では、価格設定が非常に重要です。
高すぎれば買主が見つかりません。
しかし、売主や不動産会社が自由に価格を下げればいいわけでもありません。
債権者が、
「この金額以下では抵当権の抹消に応じられない」
という判断をする場合があるからです。
ここで難しいのが、
債権者が求める金額と、市場で実際に売れる金額が合わない場合です。
例えば、問い合わせがほとんどない状態が長く続いているなら、
- 市場価格と合っているのか
- 債権者へ販売状況を報告しているのか
- 価格変更について相談しているのか
を確認する必要があります。
「売れないから任意売却できない」
ではなく、
「なぜ売れないのか」
まで確認してください。
3.税金などの差押えが入っていないか
固定資産税、住民税などを滞納している場合、不動産に差押えが入っていることがあります。
差押えがある不動産を売却して所有権を移転するには、差押えの解除などが必要になる場合があります。
ここでも、
不動産会社が「解除できます」と勝手に決めることはできません。
判断するのは差押えをしている行政機関等です。
確認するのは、
- どこから差押えを受けているのか
- 滞納額はいくらなのか
- 売却する場合にどのような条件が必要なのか
- 債権者への配分との調整が可能なのか
です。
「差押えがあるから絶対に売れない」
とも、
「交渉すれば必ず解除できる」
とも言い切れません。
誰の判断が必要なのかを特定して、その相手と条件を確認することが重要です。
4.競売までの時間が本当に残っているか
任意売却では、時間が大きな条件になります。
競売手続きが進んでいる場合、
「法律上いつまで可能か」だけで考えてはいけません。
買主を探し、売買契約を締結し、債権者と調整し、必要書類を準備して決済する時間が必要だからです。
そのため、確認してほしいのは、
「競売の日程はいつか」
だけではありません。
「いつまでに買主を決めなければ、現実的に間に合わないのか」
です。
裁判所から書類が届いている場合は、
- 競売開始決定
- 現況調査
- 売却基準価額に関する書類
- 期間入札に関する通知
など、現在どの段階なのかを確認してください。
時間が非常に短い場合、任意売却が現実的に難しくなることがあります。
反対に、「もう無理だと思っていたけれど、確認するとまだ検討できる時間が残っていた」ということもあり得ます。
日付を見ずに判断しないことが大切です。
5.「この会社では難しい」と「任意売却そのものができない」を分けて考えたか
ここは特に大切です。
不動産会社から、
「この案件は任意売却できません」
と言われることがあります。
もちろん、本当に難しいケースもあります。
しかし、その場合でも、
なぜできないのかを具体的に説明してもらってください。
例えば、
- 債権者が承諾しない
- 市場価格との開きが大きすぎる
- 差押え解除の条件が整わない
- 共有者の同意が得られない
- 時間が足りない
など、理由が明確なら判断できます。
反対に、
「難しい案件なので無理です」
だけでは、本当に任意売却そのものが不可能なのか、その会社では対応が難しいという意味なのか判断できません。
これは現在の会社を批判するという意味ではありません。
会社によって、経験した案件、対応できる地域、連携している専門家、扱える業務範囲は異なります。
だからこそ、
「できない理由を具体的に教えてください」
と確認してください。
その理由が分かれば、別の専門家にセカンドオピニオンを求める場合にも役立ちます。
本当に任意売却が難しいケースもあります
ここは正直にお伝えします。
相談先を変えれば、どんな案件でも任意売却できるわけではありません。
例えば、
- 債権者の承諾が得られない
- 必要な関係者の同意が得られない
- 売却できる価格と必要な条件との差が大きい
- 差押え等の解除条件を整えられない
- 競売が進み、実務上必要な時間を確保できない
- 買主が見つからない
などの事情によって、任意売却が成立しないことがあります。
ですから、
「他社で断られた案件でも必ずできます」
という説明には注意してください。
大切なのは、
できると言ってくれる会社を探すことではありません。
できない理由を正確に確認し、まだ検討できる方法が残っているかを調べることです。
こんな「できます」にも注意してください
「できない」と言われて不安になっているとき、
「うちなら絶対できます」
と言われると安心すると思います。
しかし、任意売却には不動産会社だけでは決められないことがあります。
例えば、
- 債権者の承諾
- 抵当権の抹消
- 差押えの解除
- 引越費用の取り扱い
- 売却代金の配分
- 買主が見つかるかどうか
などです。
そのため、
「できます」だけではなく「誰の承諾が必要で、何を確認すればできる可能性があるのか」
まで説明してもらってください。
良いことだけを言ってくれる人より、
難しいところを先に説明してくれる人
の方が、結果として安心して任せられる場合があります。
セカンドオピニオンで確認するなら、書類を見てもらう
「任意売却できない」と言われた理由を別の専門家に確認するときは、できるだけ書類を用意してください。
例えば、
- 住宅ローンの残高が分かるもの
- 金融機関・保証会社から届いた書類
- 債権回収会社から届いた書類
- 裁判所から届いた書類
- 税金や差押えに関する通知
- 不動産会社との媒介契約書
- 現在の売出価格が分かる資料
などです。
口頭で、
「銀行にダメと言われました」
だけでは、何がダメだったのか分からない場合があります。
書類を見ることで、
誰が、いつ、何について判断したのか
が分かることがあります。
専門家コメント 宅地建物取引士 松本
「任意売却はできません」と言われた方からご相談を受けたとき、私は最初に、
「なぜできないと言われましたか」
と確認します。
ここが分からなければ、できるとも、できないとも言えないからです。
債権者の判断なのか。
価格の問題なのか。
差押えなのか。
時間なのか。
関係者の同意なのか。
それとも現在の進め方では難しいという意味なのか。
原因によって、次に確認する相手も方法も変わります。
そして、確認した結果、
「これは難しいです」
とお伝えしなければならないこともあります。
私は、それも専門家の仕事だと思っています。
できない案件を「できます」と言って時間を使うことの方が、相談者にとって大きな損失になる場合があるからです。
一方で、理由を整理していくと、
まだ確認していないことが残っていた
という場合もあります。
ですから、一度断られたからといって、会社探しだけを繰り返すのではなく、
まず「できない理由」を明確にしてください。
任意売却で大切なのは、希望を持たせることだけではありません。
今できることと、できないことを正確に分けること。
そこから現実的な方法を一緒に考えることだと思っています。
よくあるご質問
Q1.銀行に任意売却はできないと言われました。もう無理ですか?
その言葉だけでは判断できません。任意売却そのものを認めないという意味なのか、現在の条件では承諾できないという意味なのかを確認する必要があります。
Q2.他の不動産会社で断られました。相談できますか?
相談は可能です。ただし、相談先を変えれば必ず任意売却できるという意味ではありません。まず断られた理由を確認し、別の方法が検討できるかを整理します。
Q3.税金の差押えがあります。任意売却できますか?
差押えがあっても検討できる場合はありますが、解除等について差押えをしている行政機関等との調整が必要になることがあります。必ず解除できるものではありません。
Q4.競売開始決定通知が届いています。まだ相談できますか?
相談することはできます。ただし、任意売却が現実的に可能かどうかは競売の進行状況や債権者の方針などによって変わります。裁判所から届いた書類を用意して、早めに現在の段階を確認してください。
Q5.セカンドオピニオンを受けたら、今の会社を変えなければいけませんか?
いいえ。現在の説明や進め方が適切であれば、そのまま現在の会社で進めるという判断もあります。
まとめ
「任意売却はできない」と言われたときは、すぐに諦めるのでも、別の会社なら必ずできると思うのでもなく、まず理由を確認してください。
確認するのは5つです。
- 債権者が任意売却そのものを認めていないのか
- 売出価格に問題がないか
- 税金などの差押えが入っていないか
- 競売までの時間が本当に残っているか
- 「この会社では難しい」と「任意売却そのものができない」を分けているか
そのうえで、
まだ確認していないことがあるのか。
本当に難しいのか。
を整理してください。
「できます」と言ってくれる会社を探すことが目的ではありません。
今の状況で取れる方法を正確に知ることが目的です。
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最後に
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そして、
できることだけでなく、できないこと、相手の判断が必要なことも最初にお伝えします。
「任意売却はできない」と言われたときこそ、できる会社を探す前に、まずその理由を確認してください。
どこの会社に相談するかだけでなく、誰を自分の味方につけるのか。
その判断材料にしていただければと思います。

